中国・習近平主席が大胆な金融改革を準備!?(相馬 勝)
依然として、中国経済の先行きを不安視する見方が広がっている。今年の第2四半期の経済成長率が7・5%と、第1四半期の7・8%を下回ったからだ。通年目標の7・5%も難しいのではないか、との悲観的な予測もある。
それを裏付けたのが、楼継偉・財政相が7月中旬、ワシントンで開かれた米中戦略対話で漏らした「経済成長率が7%、いや6・5%まで下がっても耐えられる」という発言だった。
ロイター通信は「経済成長率の目標を実質的に引き下げた」と報じた。さらに、国際通貨基金(IMF)も中国政府がこのまま改革を先送りすれば、5年後の2018年の経済成長率は「4%にまで落ち込んでしまう可能性がある」と発表した。
中国の経済成長率の伸びが鈍化しているのは、貿易の不振や国内需要の低迷などさまざまな原因が考えられるが、バブル崩壊を回避するため、金融的な措置を講じて不動産価格を引き下げたことも一因だ。
不動産投資と深くつながっているのがノンバンクの「影の銀行(シャドーバンキング)」だ。この貸し付け規模について、米大手投資銀行のJ.Pモルガン・チェスは最大で36兆元(576兆円)と推計。これは中国の国内総生産(GDP)の70%に迫る額だ。これらの大半は、実質的に地方政府が出資する不動産開発会社「融資平台(プラットフォーム)」に流れている。
さらに、シャドーバンキングは貸し出し債権などを小口化して投資家に販売する理財商品で集めた資金も融資プラットフォームに貸し付けている。中国の銀行のお目付役的な政府機関である中国銀行業監督管理委員会の尚福林主席は3月末現在の理財商品の残額について、8兆2000億元(約130兆円)と発表した。
このまま景気減速や不動産価格の下落傾向が続けば、シャドーバンキングは資金を回収できず、回り回って大手銀行や個人投資家にも損害が出る可能性が高い。その結果、取り付け騒ぎが起きて、社会不安が増し、銀行が倒産に追い込まれ、国際的な金融不安の引き金になるとの懸念も消えない。
しかし、米経済誌「フォーチュン」によると、習近平国家主席は最近、政府の金融政策担当幹部に「GDPは気にするな」と指示したという。中国は今後、大胆な金融改革を準備しており、経済成長の鈍化は折り込み済みとの見方もあり、習主席が打ち出す経済政策に期待が高まっているのも事実だ。
習近平国家主席
DoD photo by Erin A. Kirk-Cuomo
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