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国際公約となった安倍総理の「放射能汚染実態ゴマカシ発言」!(大貫 康雄)

安倍総理は7日(現地時間)、ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で福島原発事故の放射能汚染水問題について“健康被害もなく、汚染水は完全にコントロールされている”、と発言。これが2020年五輪の東京開催決定に大きく影響したと言われる。

しかし、独公共放送『ZDF』は“安倍総理が嘘を突いた、(国際的に公約した以上)これから国際的な監視が一層強まる”と批判するなど海外の目は厳しい。

事実、事故を起こした原発からは、汚染地下水流出だけでなく大気中にも放射能が放出され続けている。公約通り、事故の完全収束と放射能汚染対策を厳しく実行しなければ東京大会2度目の返上もあり得る。

2020年オリンピックの開催地を決めるIOC総会で安倍氏は、事故を起こした福島第一原発の汚染水流出問題について(港湾内の)「0.3平方km以内に完全にブロックされており」、「コントロール下にある」と発言し、また食品や水からの被曝量も、“どの地域でも基準の100分の1で健康に影響は出ていないし、今後も出ない”、などと語った。

福島の町や海で現在何が起きているか注意している人たちから見れば、現実をまったく無視する、驚くような発言だ。

IOCの委員たちには、安倍氏は何と言っても一国の政府の最高責任者・総理大臣だ。ノルウェーなど一部のIOC委員から最後まで丁重ながら強い疑問が出されたが、この発言で過半数の委員が東京開催を支持した。

海外のメディアは、54年ぶりとなるオリンピック東京開催決定の背景など分析を交えて大きく伝えた。しかし東京電力福島第一原子力発電所の事故が2年半経っても一向に収束の見通しが立たないことは世界が知っている。

安倍氏の説明に疑問を呈するメディアはあっても、(日本の一部のメディアは別に)氏の発言を無条件で報道するノー天気なメディアはほとんどなかった

英公共放送『BBC』は、“(放射能の完全封じ込めまで)日本には7年間の猶予が与えられた”などと報じた。さらに独公共放送『ZDF』のヨアヒム・ハーノ(Joachim Hano)東アジア総局長は、高濃度汚染水が大量に太平洋に流出し続けていること、福島では健康被害が出ていることを伝えた後、「安倍氏は嘘を突いている」と一言で切り捨て(事故収束に“政府が責任を持って当たる”との発言は、IOC総会での総理発言で国際公約となった以上「国際社会からの監視の目が一層強化されることになる」、ときつく批判している(欧米で嘘を突くのは最悪の行為のひとつ。ウォターゲート事件で辞任を余儀なくされたニクソン米大統領も嘘を突いたことが最も問題視された。ハーノ記者はこの2年間、内外メディアの中でもひときわ鋭い取材で真相をえぐるリポートを送り続けてきた。今でも何度も福島に入り、原発事故収束作業の状況と被曝被害の実態を継続取材していて、彼は今回も断固たる口調で安倍発言を批判している)。

この安倍発言には、これまで国民を欺き続けてきた東京電力でさえ驚いて、“完全に……とは言えない”など、安倍発言を否定するような会見をしている。

「政府が東京電力に代わって事故収束の責任を持つと言っても“収束のための効果的な具体的策はない”(CNN)

「国民の税金を使って単に大手企業の金儲けに手を貸すだけだ。地下水凍結などゼネコンの専門家でさえも効果を疑問視している。地下水凍結作業にはすでに何百億円も投じられている(事故原発敷地や汚染地域の最終的な除染、整地には)何兆円もの経費をかけて40年はかかるだろう(英『The Guardian』)」

すでに大量の放射能が広い地域に拡散し、乳幼児だけでなく人々の特に内部被曝による健康被害が増えてくることは必至な状況だ。

東京は1940年にオリンピック東京大会の開催を返上している。日中戦争悪化のためだった。

今回の東京大会実現に、今や原発事故の完全収束と放射能汚染拡散防止、そして被害者保護は政府の最優先課題だ。これを根本的に実行しない限り、東京での競技参加を拒否する選手が続出することさえ考えられる。

いい加減にするならば再び“オリンピック開催地返上”を迫られる事態になるだろう。

安倍氏はこの嘘による“国際公約”をオリンピックのためだけでなく、いや、それ以上に福島や各地の被害者、被曝者救済のために文字通り完全に実行する責任がある。

by Chatham House

from http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shinzo_Abe,_Prime_Minister_of_Japan_(9092387608).jpg?uselang=ja