安倍首相の根拠なき汚染水安全宣言とあさましき五輪招致運動 (藤本 順一)
「経済再生と財政健全化をしっかり達成することを示していきたい」
安倍晋三首相は4日、記者団を前にこう述べ、主要20カ国首脳会議(G20)出席のためロシアのサンクトペテルクへ向かった。しかしながら、各国首脳の最大の関心事がシリア問題であることは言うまでもない。
安倍首相は前日のオバマ米大統領との電話会談でシリアへの軍事介入について「国連安全保障理事会の決議を得る努力を継続して欲しい」と述べ、国連や各国と連携して対応するよう求めたそうだ。現行憲法下、国連中心主義を掲げる日本の外交方針からすれば当然のことだ。
ではなぜ、先に安倍首相は何ら確信のないまま、アサド政権の化学兵器使用を批判し、軍事介入による国家体制の刷新にまで言及してしまったのか。内政干渉も甚だしい。少なくとも戦後、日本の歴代首相が他国の政権に対して公然と退陣を求めた例を知らない。
あるいは安倍首相がシリアへの軍事介入を集団的自衛権の拡大解釈と際限なき自衛隊の海外派兵に道を拓く好機と捉えているとすれば、看破できない発言である。
安倍首相はサミット出席後、7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される国際オリンピック委員会(IOC)総会に駆けつける。
「いよいよ開催地決定に向けて秒読み段階に入った。日本の熱気をIOCの皆さんに伝えて東京招致を勝ち取りたい」
これも出発前、安倍首相は記者団に述べている。
東京開催が決まればこれを否定することはないが、ここにきて福島第一原発の汚染水問題が最大の障害になっていることは周知のとおりだ。
これについて安倍首相は「政府が前面に出て完全に解決していく。抜本的な措置を断固たる決意で講じており、7年後の20年には全く問題ないとよく説明したい」と述べている。
しかしである。そもそも五輪開催地決定の場で放射能の安全を訴えなければならないところに東京招致の無理がある。
もっと言えば、抜本的な措置があるというのならばまずは国民に説明するのが首相の務めだ。国民が納得し、安心して暮らす姿を見せてこその東京招致ではないのか。首相の発言は重い。人命に関わることであれば、なおさらだ。安売りしてはかえって国益を損なう。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
※Photo:Fukushima 1 01(Wikimedia Commons/Author:own work)