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10名の放射能汚染はバスを待っていた数分間か!?(おしどりマコ)

2013年8月12日午後0時33分頃、福島第一原発の免震重要棟前の連続ダストモニタの警報(高高警報と高警報)が発生し、同時刻にその付近にいた16名のうち10名から身体の汚染が検出された。

免震重要棟の前のユニットハウス上部に取り付けられているミスト(熱中症対策の水を噴霧する冷却装置)の関与が当初疑われたが、ミスト装置の水の汚染は無いこと、ミスト装置本体の汚染の程度も低いことから、その可能性は低いとされている。

筆者は12日、14日の会見にて、様々な質問をし、福島第一原発の作業員の方々にも取材をしたので、そこで得られた情報をいったんまとめる。

【時系列】

12時半すぎ~、免震重要棟の前で、バスを待ち始める。
12時33分、免震重要棟の前の連続ダストモニタ2台が警報発生
(1台は放射能高高警報と放射能高警報、もう1台は放射能高警報)
12時35分、免震重要棟の前から16名を乗せ、バスが発車
12時40分、バスで入退域管理施設に着き、退域のチェックを受けたところ、16名のうち10名に放射能汚染が確認される。
12時48分、構内に全面マスク着用を指示
13時16分、水道水の使用禁止を指示
13時25分、免震重要棟前のミスト運転停止

(免震重要棟前 ダストサンプリング結果)
*13時05分~25分:1.4×10の-5乗Bq/cm3
*14時10分~30分:1.2×10の-5乗Bq/cm3

16時21分、全面マスク着用の指示を解除
16時45分、水道水の使用禁止を解除
なお、連続ダストモニタの放射能高高警報の設定値は1×10の-4乗Bq/cm3
放射能高警報の設定値は5×10の-5乗Bq/cm3である。

高高警報が発生した連続ダストモニタの指示値は1.6×10の-4乗Bq/cm3、
高警報が発生した連続ダストモニタの指示値は、回答待ちである。

2台の連続ダストモニタの位置関係も質問をしており、回答待ちである。


ミストシャワーは平成23年の秋頃に設置され、平成24年度も使用されていた。
しかし、作業員の方に取材すると、今年度はミストを必要とするほど暑くなったのは最近で、お盆の数日前からの使用だった、と聞いた。なので、今年度、いつからミストを使用していたのか、質問しており、回答待ちである。

【10名の行動】

詳細な行動記録は現在聞き取り中、とのことだが、免震重要棟内で10名の汚染確認をしてから、バス待ちをしており、その後、汚染が確認されたため、免震重要棟前での汚染が強く疑われている。

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10名の汚染の方々のばらつきは無いか、詳細な汚染の状況も質問している。

身体汚染者の汚染部位は

首から上のみ:5名
首から上を含む上半身:1名
首から上を含まない上半身:3名
全身(口鼻まわりに汚染なし):1名

線量は、最大値が19Bq/cm2
以下、17Bq/cm2
15Bq/cm2
12Bq/cm2
12Bq/cm2
7.8Bq/cm2
6.9Bq/cm2
5.4Bq/cm2
4.8Bq/cm2
4.3Bq/cm2

となっている。

全員男性で、50代2名、40代3名、30代2名、20代3名ということである。

現在、免震重要棟前は「マスク解除エリア」に指定されており、全面マスクは義務づけられていない。なので、この10名の方々はサージカルマスク、一般作業服である。

 

サージカルマスク着用なので、口鼻まわりの汚染は無い、体表面をサーベイしても汚染は無かった、内部取り込みは無い、ということだが、筆者は少し疑問がある。

頭部・顔面に高い汚染度があったのに、なぜ、鼻の粘膜のスミア試料をとらなかったのか。
頭部・顔面の高い汚染は、本当にサージカルマスクで防げるのだろうか?

WBCで測定し、内部取り込みは無い、ということだが、
ダストサンプリングで測定されたものは確認すると全β核種であった。

セシウムならWBCで検出できるが、構内に高濃度のストロンチウムが含まれた地下水が大量に存在している現在、全βに寄与している核種がストロンチウムならば、WBCで検出は難しいのではないか。

そう、筆者が問うと「確認する」との回答であった。


汚染された10名の方々の立ち位置は
バス停から1~3、5、6、8、10、11、13、14番目である。

このように汚染された方々とそうでない方々が混在している。
(汚染されていないとされる6名の方々は4Bq/cm2以下、ということで
最も低い値の4.3Bq/cm2の方とそう大差ないのかもしれないが)

後の取材で、最大値の19Bq/cm2の方は、8番目に並んでおり、
全身の汚染が検出された方であることがわかった。

当初筆者は、バス待ちの順番に、何らかの傾向が表れるのかと思っていたが、
16名並んでいる方々の真ん中の方が最も高い値と広い汚染範囲ということで驚いた。

何番目に並んでいる方が、どの値で、どの部分を汚染されたのか、身長、体格なども公表してもらえないか、要望している。

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ここで、重要な情報を得た。

作業員の方に取材すると、このバス待ちエリアの南側に、駐車場があり、そこに汚染車がたくさん駐車していたり、発車しているというのだ。

現在、汚染のレベルが高く、持ち出し禁止の車両は、福島第一原発の構内だけで使用されている。

その車両の一部の駐車場がこのバス待ちエリアの南側にあるというのだ。

東京電力の資料によると、ちょうどその方向から風が吹いている。
(風向きをみると、ミストの影響は受けないような方向に吹いている)

ここで重要なのは、汚染された方々の核種の解析、警報が発生した連続ダストモニタの核種の分析である。

筆者は、連続ダストモニタの濾紙を解析していないのか、と12日14日に質問したが、驚くべき回答が返ってきた。

まだろ紙の解析をしていない、というのだ。

警報が発生し、実際に身体の汚染があったというのに、なぜろ紙の核種の解析を行わないのか。驚いて重ねて問う筆者にこう回答が返ってきた

「必要な解析だと認識しているが、現在まだ行っていない」

平成25年の4月に連続ダストモニタの警報が発生したときは、翌日には、ろ紙の解析の結果が出ていた。誤報であったのだが。

再び、作業員の方に取材すると、

 

連続ダストモニタの警報が発生すると、その部分のろ紙はすぐに回収してラボにまわし、解析することになっている。ルーティンのマニュアルで決まっているはずだ。ラボの解析が詰まっているのだろうか?」

――いや、でも、警報が鳴って、身体汚染が10名出ているのだから、最優先のはずではないか?

「自分もそう思う。なぜ、ろ紙の解析が行われていないのだろう。ひょっとしたら、短半減期の核種が減衰するのを待っているのだろうか…? 冗談だが… しかし、数時間、数日が半減期のものなら、1週間もしたら、解析しても出てこないだろうから…」


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汚染された方々は、ウェットティシュで拭き取り、その後、退域された。
ウェットティッシュからは、セシウムが存在することは確認したという。
(定性的な検査のみで、定量的な解析はしていない)

そのウェットティッシュは破棄したのか、解析しないのか、と質問もしており、回答待ちである。

拭き取った後の、最大値は6.9Bq/cm2であるという。

(そのレベルで作業服などが汚染されていれば、家や寮などに持って帰らず、破棄の指示が出る、と話す作業員の方もいた)

作業員の方々の汚染のスミア試料での詳細な核種の解析や、連続ダストモニタの濾紙の核種の解析、そして、その付近のいろいろな場所のスミア試料での核種の解析をすれば、傾向、原因が見えてくるのではないか。

前述の汚染車両のスミア試料をとり、核種を解析すれば、相関がわかるかもしれない。

この、10名の方々の身体汚染が発生してから、福島第一原発で作業されている方々はとても不安がっておられ、かつ怒っておられる。

東京電力が「全面マスク解除エリア」と指定した一般作業服のエリアで、このような汚染があったにも関わらず、構内には何の説明も無いという。

「もうミストは怖いからあたりたくない」
「突然、トイレや水道の使用禁止がアナウンスされ、何のことかわからなかった」
「普通に使っている水道や、ノーマスクエリアで高濃度汚染がある可能性があるならば、もう少しきちんと作業員に説明するべきではないか?」

東京電力にこれらをぶつけると
「作業員に説明はしていないが、連続ダストモニタの警報が発生してから、マスク着用指示のアナウンスはしている」という回答をされた。

警報が鳴ってから、マスク着用指示をしても、遅いのではないか、
実際、10名の汚染が確認されたのだから、
警報が鳴った横で、そのままバスに乗り、退域しようとするのも、少し疑問な運用ではないか、とも質問したが、明瞭な回答は無かった。

現在、本当にシビアな状況の中で、原発事故の作業にあたっている方々に対して、安全の配慮を欠いた対応ではないだろうか。

早急な原因究明、対策、そして作業員の方々への説明を筆者は要望している。

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しかし、この件に関しての(いや他の件でもそうだが)東京電力の対応は本当に遅い。

会見での質疑を少し抜粋する。

――眼の汚染は?眼の線量当量はどのように評価しているのか?

「眼も口鼻に含む。汚染は無い」

――一昨日はマスクしているから口鼻の汚染は無いということだったが。ゴーグルはされていないはずだが。

「していない、しかし汚染は無い」

――?では顔面の汚染というのは? 眼口鼻以外の汚染か?

「頭部という意味である」

――??頭部と顔面の汚染がある、と一昨日発表があったのだが?

「それはどこの発表か?」

――東京電力の発表だが…

「確認します。」

この調子である。

8月12日の会見の質疑を、相方が書き起こしている。
http://daily.magazine9.jp/m9/oshidori/2013/08/post-110.html
(14日の会見の書き起こしは現在行っており、終わりしだい、リンクする)

福島第一原発の敷地内の全面マスク解除エリアは現在拡大してきているが、やはり、被曝が怖いので、ノーマスクエリアでも全面マスクを常に着用している方もおられるという。

東京電力が運行している構内循環バスは、一般作業服でしか乗ることができない。
タイベックなどの装備で構内に入る場合は、協力企業が、自社で車両を用意せねばならないという。

「今回、汚染された方々は東京電力の社員の方々ですよね、電力がノーマスクエリアと指定したところで、東京電力の社員が、被曝を恐れ、全面マスクを付けるというようなことはしたくても難しいのでは…」と話す作業員の方もおられた。

とにかく、各所の核種の分析を急ぎ、早急な原因究明と対策、説明を切に求む。

【NBオリジナル】

[caption id="attachment_13545" align="aligncenter" width="620"] 会見の後のぶら下がりで、東京電力社員に説明を受けながら、持っている資料の裏側をガン見する筆者。(撮影:おしどりケン)(ケンの強い要望で掲載する)[/caption]

【NBオリジナル】