安倍首相は、本当にアフリカ人留学生のことを考えているのでしょうか（ウィリー・ルケバナ・トコ）

2013/08/10

安倍首相は、本当にアフリカ人留学生のことを考えているのでしょうか（ウィリー・ルケバナ・トコ）

最近、“ＤＪポリス”がメディアで取り上げられ、市民と警察がどう向き合うかが話題になっています。

私は日本で15年近く暮らしてきましたが、警察やその他の警備の方たちから、これまで幾度となく理不尽な目に会ってきました。その理不尽な行為は、あまりにもパターンが類似しています。

先日、ＮＨＫに仕事で訪れた時、入り口でＡＤカード（入館証）をかざしてカバンの中に戻すと、警備の人が「エクスキューズミー・サー」と声をかけてきました。そこで私は「なんですか？」と聞くと、「ＡＤカードを首から下げるように」と言われました。

その時、私のＡＤカードにヒモがついてなかったので、「今、ヒモがありません」と説明すると、その警備の人は「局内ではＡＤカードは首から下げることになっている！　これはルールです」と横柄な態度で言うのです。

ルールなのはわかります。しかし局内を見るとＡＤカードを首から下げていない人は大勢います。たくさんの人が赤信号を無視すれば、信号無視が正当化されるというつもりはありませんが、ＡＤカードを首から下げていないことで私が粗末な扱いを受ける必要があるかということに大きな疑問を持ち、がっかりしました。

最終的に「７階に行って紐を入手してください」と言われ、その場から“釈放”されました。

また別の日、大学で用事をすませ家に帰ろうと歩いていると、自転車に乗った女性警察官が反対側から向かってきました。そして、私を見た瞬間、彼女は自転車のハンドルが揺れるほど驚き、何も言わず通り過ぎていきました。私は「この警察官は黒人を見てびびったんだ」と思いました。

私が100mほど進むと、その女性警察官は戻ってきて「すみません、さっき目が合ったので、身分証を見せてください」と言いました。私は「ごめんなさい。目が合ったからという理由で身分証を見せろというのは、私には理解できません。今、時間がないのです。身分証は出しませんので、どうぞ、逮捕してください」と答えました。

これは、日本に来てから何度も経験したパターンです。こう答えると、その後、大勢の警察官やパトカーが来ることは知っています。

女性警官は応援を呼び出していました。そして、最終的に８人の警察官と２台のパトカーに囲まれる“大事件”になってしまいました。

結局、一時間以上費やして、私は「パトロールするのがあなた方の仕事です。私たちを守ってくれていることもよくわかりますが、このやり方でいいのでしょうか？」と身分証を出し、ようやく“釈放”されました。

最後に「気分を悪くさせて申し訳ありません」という謝罪の言葉があり、立ち会った地域担当警察官の謙虚さには「さすが日本だな！」と思いました。

本来なら私がすぐに身分証を見せればすんだ話なのに、なぜ、ここまで大げさにする必要があったのかと思われる方もいるのかもしれません。しかし、私のこの行動には、私が日本の警察官や警備の人たちにどうしても伝えたいメッセージがあるのです。

それは、多くの警察官や警備の方は「黒人に対して神経質になり過ぎている」ということです。

「それは黒人だからじゃない」と言う方がいるかもしれませんが、説得力はありません。女性警官が私を「あやしい」と思ったのは、おそらく「黒人がこの辺りでなにをしているんだろう」という心理が働いたからです。それ以外に「目があったから」という理由で、身分証を要求される根拠がわかりません。

もし、警察と目が合うたびに身分証を提示しなくてはならないのならば、それこそ首から身分証をぶら下げるしかありません。

はっきり言わせていただければ、日本の警察は黒人に慣れていない。

そのため、このような態度を取らせてしまっているのでしょう。では、白人には慣れているかというと、そうではありません。慣れているというより「価値の違い」を感じているのでしょう。

今回、私が指摘した問題は、日本がこれから「改善すべき点」だと思います。私はこのような“いやがらせ”としか言いようがない扱いにずっと耐えてきました。

ところで、安倍政権は６月初めにパシフィコ横浜で開催された『第5回アフリカ開発会議』で、アフリカに対する援助や投資などを打ち出しました。なかでも「アフリカからの留学生を増やす」というアフリアの人々にとって、歓迎すべき取組です。しかし、日本に留学する若者たちが、こうした日本の警察や警備の人々の“いやがらせ”に耐えられるかどうか。

また、日本はこうした“いやがらせ”を改善することができるのか。それこそが、今後の日本の大きな課題となってくるに違いありません。

【DNBオリジナル】