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派閥談合政治の復活で安倍首相に突きつけられた「踏み絵」(藤本 順一)

30日に行われた自民党参院議員の会長選挙は安倍政権の今後を占う上で極めて大きな意味を持つ。結果は投票総数114票(無効1票含む)のうち、町村、額賀、岸田の参院主流3派が推す溝手顕正幹事長(70)が82票を集め、派閥主導の談合人事に反発して急遽出馬した鴻池祥肇(72)は31票に止まった。溝手氏の大差の勝利が派閥政治の復活を意味することは言うまでもない。今後、安倍政権は良くも悪くも参院自民党を牛耳る主流3派への依存度を高めることになろう。

もっとも2期6年の長期政権を視野に入れる安倍首相が政権基盤を固めるにはむしろその方が好都合なのかもしれない。

振り返れば昨年秋の自民党総裁選で安倍首相はライバルの石破茂幹事長に国民人気で大きく水を開けられ、国会議員票では額賀、岸田(旧古賀)、山崎の3派連合が推す石原伸晃環境相に及ばなかった。つまり自民党は二番手候補を総裁に選んでしまったのである。

幸い自民党は民主党の自滅で政権復帰をはたし、安倍内閣は高い支持率に支えられて政権の求心力を保ってきた。

ところが、参院選で圧勝したにもかかわらず頼みとしていた内閣支持率にも陰りが見え始め、さらに今秋には消費増税やTPPへの参加、沖縄米軍基地の辺野古移転、社会保障費の削減など国民に不人気な政治決断が迫られている。安倍首相は頼みとする内閣支持率が急落することも想定しているはず。そうなれば、否応なく政権運営の軸足を総裁選で対立した町村、額賀、岸田の3大派閥に移さざるを得なくなるわけだ。

そうなると安倍政権誕生の最大の功労者で盟友とも言える麻生太郎副総理兼財務相との関係が微妙になってくる。周知のとおり、額賀、岸田の両派にとって麻生氏は天敵だ。おそらく主流3派は秋の臨時国会を前に予定されている内閣改造党役員人事で麻生はずしを迫ってくるだろう。 今回の参院議員会長選で溝手氏大勝の最大の功労者は鴻池陣営に走る新人議員を締め付け菅義偉官房長官だと言われている。あるいは安倍首相の麻生はずしはすでに始まっているのかもしれない。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

※トップページフォト:Taro Aso Jimin(Wikimedia Commons /Author:Ogiyoshisanより)