海側遮水壁の上部2mほどは、遮水できていないので汚染水は海洋へ出続け。(おしどりマコ)
2013年7月31日、東京電力定例会見の質疑の最中に、驚く情報が出された。
海側遮水壁についてである。
現在、超高濃度の汚染水が地下水に浸潤し、海洋へも漏洩していると確認された
2号機と1号機の間の、いわゆるNo1エリア、この付近の汚染された地下水が海洋へ直接漏洩することを防ぐため、
海側の地盤改良材を注入して固化し、土中に遮水壁を作る対策をとることになっている。
[caption id="attachment_12912" align="aligncenter" width="620"] 超高濃度汚染水の海洋漏洩を防ぐ地盤改良工事。海側に薬液注入し、土中に遮水壁を作る。[/caption]
筆者は、この地下水の汚染が明らかになったときからすぐに、この付近の地下水の総量と流速、そして地下水の水位を質問していた。
地下水観測孔の水位、汲み上げた翌日にどのような水位になっているかなどのデータから、推測できるのではないか? と
たびたび質問していた。
その他、降雨と潮汐の地下水への影響を評価するデータも質問していた。
数週間質問し続けた結果、地下水の観測孔の水位のデータ、潮汐と地下水位のデータが大量に公表され、
海洋への漏洩の発表につながったのである。
(数週間質問し続けた結果、なぜこのデータが参議院選の翌日に出てきたのか、と筆者は東京電力に問うと、
「意を尽くしておらずすみませんでした」と回答された。
筆者が会見で質問し続けたとき、会見場にはたくさんの東電社員がいるが、誰一人、このデータを確認してくださらなかったのか、と問うと
「そこのあたりにも不備があり申し訳ありません」ということであった。)
話は戻る。
ここで、問題がある。
地下水位は公表されたが、地下水の総量は、まだ未評価なのである。
筆者は質問し続けているが 「現在、まだ評価中」という回答のみである。
なぜ、総量が問題か。
地下水の汚染は濃度(Bq/L)の発表のみで、いったいどれだけの地下水が汚染されているのか(何L)か
全く見当がつかない。
そして、この海側の土壌を固化し、土中に遮水壁を作る、という対策がとられることが発表されたときから、
筆者は質問し続けていることがある。
「遮水壁を作ると、この付近に地下水がたまり、地盤がゆるんだり、浮力が働くことが考えられる。
事故以前は、1~4号機まで、サブドレンで850m3毎日揚水していた。それは地下水の流入防止と建屋に働く浮力の防止が目的だったが、
この付近の地下水の総量をどれくらいと評価しているか、そして、地盤のゆるみ、浮力をどう評価しているか」
東京電力の回答は、
「地下水の総量は、重要なデータだと思うが評価が難しい。
地盤のゆるみなどの評価は今後、遮水壁が完成してから状況をみて検討していく。
建屋への浮力については、現在、建屋の地下には穴が開いていて地下水が入っており、浮力を懸念する状況にない」
「地下水の総量がわからなければ、海側に遮水壁を作っても、どのくらいの時間でこの付近が満水になり、
遮水壁以外の部分、側面から拡散するのかわからないのではないか?」
東京電力の回答は
「いろいろな測定からきちんと評価をしていく」
といったアバウトなものである。
継続して筆者は、この付近の図面に出ていない配管、トレンチ、それぞれのO.P.
この付近の浮力を受けそうな建造物など、詳細な図面も出してほしい、と要望し続けている。
2011年には図面にあった、スクリーン操作室やスクリーン操作室電線管路などの図面が、2013年度は消されていたからである。
また、筆者は、
「陸側遮水壁の案として、凍土壁(土壌を凍らせて、敷地内への地下水の流入を防ぐ案) が上がっているが、
土壌改良剤を注入して、遮水壁ができるのなら、陸側にも土壌改良剤を注入すれば早かったのでは?」
と聞いてみた。
東京電力の回答は
「凍土壁は、土壌を凍らしているだけなので、遮水の必要が無くなったり、調整するために、
土壌を復帰させることができる。
しかし、地盤改良材を注入しての遮水壁は、復帰ができない。
永久的にその土壌は固化してしまう。
今後どのような状況になるか、まだ未定なので、復帰できない措置はリスクが高い。
固化した土壌付近は、その後、ほとんど何も利用できなくなるので。」
[caption id="attachment_12913" align="aligncenter" width="620"] 薬液注入し、土壌を固化する土壌改良。この工法で行っている。[/caption]
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汚染した地下水の海洋への漏洩防止のための、土壌中の遮水壁は、まとめると、
*総量が評価されていないため、どのタイミングで満水になるかわからない
(このエリアから汚染が拡散するタイミングもわからない)
*地盤のゆるみ、浮力は、遮水壁が完成してのちに、評価される。
*地盤改良材による遮水壁は、もとの土壌に復帰できず、リスクが高い。
しかし、超高濃度汚染水が、海洋へ何の遮蔽もなく、直接流れ込んでいる現況より、何らかの遮蔽をするのは、
少しは時間稼ぎの効果があるのか、と筆者は受け止めていた。
しかし、冒頭で言及した、7月31日の東京電力の会見にて、驚くべき情報が出た。
土中の遮水壁は、地下16mの不透水層までの作りになっているが、
上部の1.8~2mほどは、遮水がきいていないというのだ。
これは、薬液注入の際の圧力の関係で、浅い部分は薬液が拡散してしまい、きちんと遮水壁が形成されないことによるという。
筆者は驚いて、地下水観測孔の水位を見直した。
海側に遮水壁ができてから、このエリアの地下水の水位は上昇し続けている。
No1-2はO.P.2.91m、1-3はO.P.2.93m、1-4はO.P.2.98m、
ほぼ、どの地下水観測孔も、O.P.3mに近づいている。
この付近の地盤は、どれくらいか、というとO.P.4mである。
つまり、地下水は、地盤から深さ1mのところにまで達してきているのである。
海側遮水壁の付近の地下水の水位がわからないため、明言はできないが、
この付近が広いエリアで、地下水が深さ1mのところにまで達したということは、
遮水壁の上部1.8mの部分が遮水がきいていないならば、
すでに、海洋へ汚染水が漏れているのでは?
東京電力は
「ちょろちょろと多少上から漏れている可能性はあるだろうと思っている」
とのことであった。
[caption id="attachment_12911" align="aligncenter" width="620"] 深さ16mの海側遮水壁の上部2mが遮水できていないというポンチ絵。(マコ画)[/caption]
このような重要な情報は、出されてなかったように思うが?
「7月10日に言及した」
筆者は、7月10日の記者会見も出席していたが、そのような記憶はない。
資料を探しても無い。
あらためて、広報に、10日に資料は出たのか、会見の質疑で口頭で述べただけか、と問うと、
「資料は出ている。 遮水壁の深さは16mで、上部1.8mでなく、2mは遮水がきかない、と図面で出していた、今すぐには出せないが」
とのことであった。
31日の会見では1.8mが遮水がきかない、という情報であったので、
2m遮水がきかない、という資料がすでに公表されていたのであろうか。
筆者は、再びくまなく探したが見つからなかった。
東京電力が規制委員会にだけ提出した資料か、(たまにある)とも思い探したが見つからなかった。
再び、東京電力広報に 、
「遮水壁が上部2mは遮水がきかない、という資料はいつのものか示してくれ、東京電力が7月10日付近に出したというが資料が無い」と言うと
8月2日の昼に連絡がきた。
「おっしゃるとおり、この情報は公表していない。
大変申し訳ない。
本日8月2日の定例会見にて、詳しく状況を説明する。」
とのことであった。
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海側遮水壁は、先程述べたように、地盤のゆるみ、浮力、他エリアの汚染水の拡散、現状復帰できないなどリスクが多い。
しかし、新たにわかった情報、深さ2mの付近までは遮水ができていない、ということが出てきて、
現在も海洋への漏洩は多少なりとも続いていることがわかった。
本当に、この海側遮水壁は有効な対策なのだろうか?
東京電力が原発事故の収束計画の主導権を握っている、という現状は、
情報公開の面も含め、大変問題があると筆者は考える。
【NBオリジナル】
[caption id="attachment_12914" align="aligncenter" width="620"] 東京電力定例会見に出席する記者は低減している。記者より汚染水が低減してほしい。[/caption]
[caption id="attachment_12915" align="aligncenter" width="620"] 遮水壁の上2mが遮水がきかないという資料は出ている、とぶら下がりで言われ、確認するために自分のPCに向かって走っているところ。おしどりケンが激写しており、彼の強い要望で掲載。[/caption]