対話再開か? 緊張回帰か? 朝鮮半島の将来が8月に決まる!?(辺 真一)
朝鮮半島の情勢は、上半期の一触即発の緊張状態から下半期は平穏状態に局面が転換した。今後も平穏な状況が続き、対話の道が開かれるのか、それとも再び対立、緊張状態に回帰するのか。その分岐点が8月だ。
注目すべきバロメーターは、以下の4つである。
(1)第一に「乙支フリーダム・ガーディアン(UFG)」と呼ばれる米韓合同軍事演習が上げられる。
今春の米韓合同軍事演習(キーレゾルブとフォーイーグル)は、3月1日から4月30日まで韓国軍約20万人のほか、米軍約1万人が参加して行われた。北朝鮮がムスダン・ミサイルを東海岸の基地に配備するなど戦争一歩手前まで緊張が高まった。
UFGは米韓連合防衛態勢を維持するため、毎年行われている訓練である。昨年は韓国軍と米国軍の計約8万人が参加し8月20日から2週間にわたり実施されている。
金正恩第一書記は、この米韓合同軍事演習について、昨年の「8・25慶祝宴会」で演説し、「我慢にも限界がある」と述べ、全面的な反攻撃戦に向けた作戦計画を検討し、署名した経緯がある。
北朝鮮が7・27休戦協定関連行事で対決姿勢を打ち出さなかったことに配慮し、オバマ政権が演習の期間や規模を縮小するのかどうか。また中国がどう仲介するのか。
米韓が予定通り、大規模訓練を実施するのか。実施した場合、北朝鮮は再び臨戦態勢を敷いて、ムスダンを配備するのか。それとも黙殺するのか。いずれにせよ北朝鮮は重大な決断を迫られるだろう。
(2)第二のバロメーターは、カーター元大統領の訪朝である。
カーター元米大統領は、早ければ8月上旬にも訪朝する。目的は、北朝鮮で懲役刑に服している米国人(在米韓国人)の釈放のためだ。
カーター氏の訪朝は今回で4度目となる。今回は金正恩第一書記との会談が期待されているが、過去3回は金正日総書記と一度も会えなかった。
しかし、最初の訪問の1994年の核危機の時は、金日成主席と直談判し、戦争回避に繋がるジュネーブ合意を引き出した。今回は、訪朝前にケリー国務長官や元国連大使のスーザン・ライス大統領補佐官とも会っている
カーター元大統領が1994年と同じ役割を果たすのかどうか、金正恩第一書記に会えるかどうかがポイントだ
(3)第三のバロメーターは、開城工業団地の行方である。
南北は開城工業団地の再開をめぐって6度交渉したが、合意に至らず、決裂状態のままだ。
韓国政府は、最後通牒として7度目の交渉を呼びかけているが、7月31日現在、北朝鮮の回答はない。このまま返事がなければ、韓国政府は、閉鎖決定という重大決断をせざるを得ない。そうなれば、首の皮一枚繋がっている南北関係は完全断絶状態となる。
開城工業団地に入居している韓国企業の非常対策委員会は、妥協案として北朝鮮当局に対して「政治的な言動や軍事的脅威を理由に操業を中断することもあり得るとの立場を撤回すべきである」と求め、韓国当局にも「北朝鮮に一方的な操業中断の責任と再発防止保障を要求するのでなく、大局的な立場に立って、南北が共に再発防止を保障することで合意してもらいたい」との要望を出している。
この折衷案で南北が土壇場で手を打つのか、それとも決裂し、開城工業団地は永遠に閉ざされるのか、大きな正念場を迎えている。
(4)第四のポイントは 朝鮮総連本部の競売問題だ。
東京都千代田区富士見町の一等地にある朝鮮総連本部は、落札した鹿児島の宗教法人・最福寺が45億円で落札したが、その後資金調達ができず8月に再入札となった。
北朝鮮は拉致問題で誠意を示す条件として、整理回収機構(RCC)による競売の取り下げもしくは朝鮮総連関連企業の入札などを待望しているが、日本政府の対応が注目される。
5月に訪朝した飯島勲内閣官房参与は、参議院選挙後に「第二幕が開き、9月中旬頃には(拉致問題で)大きな進展がある」との見通しを語っている。
ならば、朝鮮総連本部が競売に掛けられ、召し上げられることはないということになるが、果たして……?
ジミー・カーター元アメリカ大統領
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