元CIAスノーデン氏事件から考えるプライバシーの扱われ方(蟹瀬 誠一)
「ビッグ・ブラザー」というと最近では大家族を扱ったテレビ番組と間違えられそうだが、1949 年に英小説家ジョージ・オーウェルが書いた作品『1984』に登場する架空の独裁者のことである。
ビッグ・ブラザーは"テレスクリーン"と呼ばれるメディアを通して国民を当局の完全な監視下に置き、逮捕や拷問などの手段で国民を支配していく。未来社会を予言したなんとも恐ろしい物語だ。しかしもっと怖いのはジョージ・オーウェルが描いた未来が今のインターネット社会で現実のものとなっていることだ。
米国家安全保障安全局(NSA)の機密情報を暴露して訴追された中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン氏の事件はその事を如実に表している。彼は米国内や全世界に対するNSAの盗聴の実態と手口などをマスコミを通じて公表したため世界から注目を集め、米政府からは犯罪者として追われる存在となった。
それだけではない。名立たるIT企業がNSAに協力していたことも裏付けられたのだ。米政府が中国側のサイバー攻撃を激しく非難していた最中に起きた内部告発であったため、同氏は中国の回し者ではないかという疑いの声も上がったが、本当のところはまだ藪の中である。
しかし007の映画を思い出すまでもなく、国同士のスパイ合戦は遠い昔から行われてきた。スパイ技術は飛躍的に進歩したが、やっている事は今も昔も同じなのだ。「国家が結ぶ友好関係に永遠などない。ただその国益のみが永遠なのである」という19世紀半ばビクトリア朝英国の首相を2度務めたパーマストン卿の言葉が真実を物語っている。
昨日の友は今日の敵となるのが国際政治の現実なのだ。米国や中国が他国に対してサイバー攻撃を仕掛けていたとしても不思議はない。そんなことに驚き慌ててサイバーテロ部隊を組織する日本の方がよっぽど能天気なのである。
むしろ私たちが一国民として注目すべきは、米国政府が最新技術を駆使して密かに自国民のプライベートな空間にまで監視の目を光らせているということだろう。まさに現代のビッグ・ブラザーだ。9.11同時多発後のテロ防止策というのが米政府の苦しい言い訳だが、それではプライバシーもへったくれもあったものではない。
かつてプライバシーの定義は「干渉されずに放っておいてもらう権利」というどちらかといえば受動的なものだった。しかし、現代の情報化社会においては「個人の情報は自分自身で管理する権利」という積極的な考え方が必要になっていると、私は思う。
【コラム「世界の風を感じて」より】
※トップページフォト:Internet2 (Wikimedia Commons /Author:Fabio Lanariより)
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