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民主党惨敗確実の参院選で問われる「連合」の存在価値(藤本 順一)

安倍晋三首相は8日の遊説で「安定多数によって誇りある日本をつくっていく」と述べ、自民、公明両党で参院のすべての常任委員長ポストを独占し、なおかつ、各委員会の過半数を占める70議席以上の議席獲得に意欲を見せた。

さらに序盤戦、マスコミ各社の情勢調査で自民党は72議席以上を獲得し、24年ぶりに単独過半数を回復する可能性さえ指摘する。

いずれにせよ参院選後は衆参のねじれは解消され、安倍首相はこれまで以上に強大な権力を手にするわけだが、一方で民主党の惨状は目を被いたくなるばかりだ。

民主党は最大支援組織の「連合」の基礎票にして、無党派層や小泉郵政選挙で離反した旧自民支持層の票を取り込み、党勢を拡大してきた。

ところが今や民主党政権に失望した無党派層や旧自民党支持層に背を向けられ、頼れるのは「連合」の組織票のみ。労組依存体質は強まるばかりだ。

ただ今回「連合」は一枚岩で民主党を支援しているわけではない。たとえば、民主党の参院選マニフェストは「2030年代原発稼働ゼロ」を掲げているが、連合傘下の電力関連産業でつくる「電力総連」は原発を「重要な電源」と位置づけているから、むしろ自民党を支援したいくらいだろう。

また、労働者にとって最大の関心事となる賃上げはどうか。今回の参院選で民主党は最低賃金の引き上げや生活困窮者支援制度の確立など8項目の政策協定を結んでいる。

ただ、連合のシンクタンクが民間企業の労働者を対象に4月に実施した「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査」で、安倍首相が経済成長戦略の集中期間としている3年後の景気について35・8パーセントが「良くなる」と答える一方、賃金が「良くなる」と答えた人は19・4パーセントに止まっている。

この数字を裏返せば労働者は労働組合の賃上げ交渉力に疑問符を突きつけているとも言えないか。

ちなみに前回参院選で連合の組織内候補は10人が当選、159万票を集めた。今回、得票数でこれを大きく下回るようなことになれば、連合の存在意義、ひいては労働運動のあり方そのものが問われることになろう。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

※トップページフォト:Headquarters of the Democratic Party of Japan (Wikimedia Commons /Author:Lombrosoより)