「(北朝鮮問題は)近いうちに解決する」“飯島予言”の意味は?(辺 真一)
訪朝から2か月近く鳴りを潜めていた飯島勲内閣官房参与が7月5日夜、BSフジの番組に出演し、北朝鮮問題(核・ミサイル開発、拉致)について「近い時期には横並び一線で全部解決する。動きだすのは遅くとも参院選の後。国連総会(9月下旬予定)の前までには完全に見えてくる」と述べたそうだ。
飯島参与はこの2日前にも記者らとの懇談会で「(参議院)選挙が終われば、一気に第二幕がスタートするかもしれない。また、第二幕のカードはトップレベルで考えなければいけないことになっている」と意味深なことを言っていた。
「トップレベル」とはずばり安部晋三総理のことである。その安部総理と飯島参与は6月27日に都内のホテルで丹呉泰健内閣官房参与(元財務事務次官)を交えて会食している。
安部総理の日誌をみると、会食から5日後の7月2日午前には古屋圭司拉致問題担当相が官邸に入っており,ほぼ入れ替わる形で今度は斎木昭隆外務事務次官が呼ばれ、さらに昼食を挟み午後からは岸田文雄外相と伊原純一アジア大洋州局長も加わって40分近く話し込んでいる。岸田外相からは東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議の報告があったものとみられる。ちなみに岸田外相はARFで朴宜春外相と接触している。
そして、飯島参与のBSフジでの発言のあったその日に安部総理が古屋拉致問題担当相をモンゴルのエルベグドルジ大統領の就任式(10日)に特使として派遣することが明らかとなった。
古屋大臣は8日に出発し、11日までモンゴルに滞在するが、参院選挙中に閣僚が外国を訪問するのは極めて異例のことである。
閣僚の中から拉致担当相が特使に起用されたのは、北朝鮮と親密な関係にあるモンゴルに拉致問題解決への仲介を要請するのが目的で、古屋大臣はエルベグドルジ大統領宛の安部総理の親書を持参するようだ。
モンゴルは北朝鮮とは伝統的に友好関係にある。また両国とも、中国一辺倒の貿易からの脱皮という共通の課題を抱えている。そうしたことから近年は経済面での関係強化が著しい。
例えば、2007年にはナンバー2の金永南最高常任委員会委員長がウランバートルを訪問した際に海運協定が結ばれている。また、2010年には日本海に面した羅先市との間で道路、運輸、建設及び都市経営部門に関する貿易協定が交わされている。海のないモンゴルの羅先市開発への参入は日本海進出への拠点を確保するのが狙いだ。
最近では、今年6月にモンゴルのHBオイル精油会社が1千万ドルを出資し、北朝鮮の「勝利精油所」の株を20%所持したばかりだ。HBオイルは北朝鮮に原油を輸出し、精製された石油製品を逆輸入する計画である。
安部総理は3月にモンゴルを訪問した際にも拉致問題への協力を求めていたが、野田政権下の昨年11月中旬に外務省局長級の日朝政府間協議がモンゴルで行われていることから再び協議の場の提供を求めるためなのか、それとも、モンゴルを通じて北朝鮮にメッセージを伝達することを依頼するのか、定かではない。
杉山晋輔アジア大洋州局長(現外務省審議官)と宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使との間で行われた政府間協議では次回の協議を北京で行うことに合意しているが、日中関係がギクシャクしていることや、北朝鮮と中国との間も隙間風が吹いていることから、次回の協議がモンゴルでセットされる可能性が大である。
さらに、北朝鮮もエルベグドルジ大統領の再選に金永南常任委員長が祝電を送っていたが、金正恩第一書記が大統領就任式に特使を送り、仮に日朝特使の接触が実現すれば、「飯島予言」は当たるかもしれない。
【DNBオリジナル】
モンゴル・ウランバートル
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