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インドネシアに学ぶ「環境・エネルギー・教育」の最先端(成瀬 久美/文・写真)

太陽光や風力、バイオマス、太陽熱、地熱など自然の力による“再生可能エネルギー”の固定価格買取制度(電力会社に電力の買い取りを義務づける制度)が始まって、ちょうど1年が過ぎた(2012年7月1日より開始)。

東日本大震災以降、スマートグリット(次世代送電網/ネットワークを利用した電力供給システム)にビジネスチャンスを見出す者も多く、現在は分譲型ビジネスやファンドまで登場している。

しかし、電力供給システムに関する取り組みだけではなく、次世代の環境づくりを意識した電力利用を考える必要があるのではないだろうか。そこで、今、次世代環境として世界から注目されているインドネシア・バリ島の『グリーンスクール』を訪れ、エネルギー問題について考えてみた。

[caption id="attachment_10939" align="alignnone" width="620"] インドネシア・バリ島のグリーンスクール[/caption]

「地球上で最も緑が多い学校(Greenest School on Earth)」と称されるグリーンスクールは2008年にオープンした。

その規模は約9万㎡(東京ドームの約2倍)。校舎は竹を材料にして作られ、吹き抜けのある建て方をしているので、どこにいても心地よい風が通り抜ける。ここでは地球との共生を一番に考え、“未来のグローバルリーダー”を育てる環境設計と教育制度を取り入れている。

[caption id="attachment_10940" align="alignnone" width="620"] (吹き抜けのある建物/グリーンスクール提供)[/caption]

[caption id="attachment_10948" align="alignnone" width="620"] (校舎も吹き抜けがあり、風がよく通る/グリーンスクール提供)[/caption]

[caption id="attachment_10941" align="alignnone" width="620"] 自然にできたプールもある(写真左上)[/caption]

エネルギーは当然、太陽光、バイオ燃料をはじめとする再生可能エネルギーを使用。現在は停止中だが、マイクロ水力発電(ハイドロエレクトリックボルテックス)も利用している。

[caption id="attachment_10944" align="alignnone" width="620"] グリーンスクールの施設や設備には竹が利用されている[/caption]

[caption id="attachment_10945" align="alignnone" width="620"] 「choose your future」と書かれた看板がある[/caption]

また、生徒達はペットボトルではなくアルミボトルを持ち(写真のように「choose your future」とアルミボトルを持つ事を提唱)、動物と交流し、自分たちで野菜を育てている(チョコレートもカカオからつくっている)。

そして自分たちでカフェ運営も行い、体験をしながら「自給自足」を学んでいく。もちろん、教科書を使った一般的な授業もあるのだが、先生と生徒の関係はフラットで(教師などの大人は保護者、ガイドをするという目線)、子どもたちは受身の学習というより、自発的に創造性を持った行動を起こす。例えば、ある生徒はオーガニック石鹸の会社を起業し、また別の生徒はソフト開発を行なっている。

[caption id="attachment_10946" align="alignnone" width="620"] (世界約40カ国から生徒が集まる/グリーンスクール提供)[/caption]

世界約40カ国から集う生徒達の未来を考える思考や発想は豊かだ。やれ緑だ、やれ環境だという、いわゆる理想主義者の集まりではない。「共生の形を経済の面でも、それ以外の面でも考え行動する」という事を実践する親が子供を入学させている(あるいは子供自身がそのような考え方である)という印象を受けた。また、それぞれの国や地域において、問題の解決を先駆的にしていこうという意識も高く、具体的に実行に移そうというある種のスケールアウト感すら覚えた。

このようなダイナミックな発想と行動は、まさに今、日本が必要としていることではないのだろうか?

原発問題は未だ解決しておらず、世界中が日本の動きを注目している。そんな中で、新エネルギーの開発を主流にという動きが出ていることは確かに素晴らしいのだが、あくまで“最初の一歩“である。

その新エネルギーで何を手がけていくのか、というのが日本にとっての課題であり挑戦でもある。

従来の経済観念や社会構築のあり方だけではなく、ライフスタイルへ大きく影響をもたらすグリーンスクールのような“場”づくりを手がける人や企業が増えることが、日本の底力に繋がるはずだ。

【DNBオリジナル】