ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

フクシマの真実(1)東北新幹線に乗って測ってみれば…(上杉隆/文・写真)

福島に通い続けている。

今年(2012年2月当時)に入ってからは、すでに12回、郡山、福島、二本松、いわき、相馬、会津と県内各地を飛び回っている。

3・11以降、「フクシマ」は世界でもっとも注目される地域の1つになった。哀しいことだ。東京電力福島第1原発事故への対応の失敗、そして放射性物質に関する住民への不誠実な情報提供は、政府のみならず、日本社会自体への不信感を生んでいる。

とりわけ放射能の問題は、福島県と日本一国だけに留まらない。大気や海洋を通じて、世界中に拡散されることから全人類共通の課題となったとみていいだろう。

実際にこの2月、私は、欧州・ルクセンブルクで開かれた欧州議会が主催する「オーフス会議」に日本の「代表」として呼ばれ、「フクシマ」の現実について語ってきたばかりだ。

四半世紀前、チェルノブイリの悲劇を経験した欧州の人々は、総じて放射能による環境汚染への危険意識が高い。

その彼らの口を借りれば、「実は、日本の国民こそがもっともフクシマの情報を持っていないのではないか」(フランスMustadis代表、ジル・エリアール・デュブルイユ氏/実は「エートス」の代表のひとりでもあった。後に判明)と疑問に通じる。

実際、そうした「情報隠蔽」は、福島に通い続けている私自身も実感している。

東北新幹線に乗って、放射線測定器(CsI(Tl)シンチレーション検出器)のスイッチを入れると、宇都宮駅まで低かった数値が那須塩原駅に近づく頃から急激にはね上がる。

福島県内では、走行中の新幹線車内ですら、毎時0・5マイクロシーベルトを超え、郡山駅前に降り立てば、空間線量は軽く毎時1マイクロシーベルトを超えてしまう(2012年2月当時/現在は0.6マイクロシーベルトまで下がっている)。

だが、こうしたセシウム汚染の実態を知る者はそう多くはない。あるいは気づいていても気づかないふりをしている者も少なくない。

政府の除染支援対象区域(現在の汚染状況重点調査地域)は毎時0・232マイクロシーベルトと定められている。県内の多くの場所はその数値を超えている。

私が、福島に通い続ける最大の理由はこれだ。世界でも最もフクシマの真実を知らない福島県の人々に、内外との情報格差を埋めてもらい、判断材料のひとつにしてもらいたいのだ。

なにより、真実を知る以外に福島の復興も支援も不可能なのである。

(つづく)

※  当記事は2012年3月、「夕刊フジ」に連載した「福島の真実」に、加筆・修正しタイトルを変えたものである。