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「韓国も、北朝鮮も」手中に収める中国の欲張り朝鮮半島外交(辺 真一)

一挙両得が中国の朝鮮半島外交

習近平主席と朴槿恵大統領との首脳会談で出された中韓共同声明は、北朝鮮の核問題に限っては韓国の思い通りにはならなかったようである。

韓国が主張していた「北朝鮮の核保有を容認しない」との表現が盛り込まれなかったばかりか、「北朝鮮の非核化」という言葉も挿入できず「朝鮮半島の非核化」という抽象的な表現を受け入れざるを得なかった。

朴槿恵大統領は、共同記者会見の場で「両首脳は、北朝鮮の核保有を容認しないとの考えで一致した」と、習近平主席も同意したことを明らかにしたが、共同声明には合意事項として表記されなかった。中国が首を縦に振らなかったのだろう。

また、中国が非核化の対象を朝鮮半島全体としたのは、中韓首脳会談の一週間前に行われた中朝戦略対話での合意事項に基づいているのかもしれない。

北朝鮮の金桂寛外務第一次官は、中国の張業遂外交副部長(首席次官)との会談で、「朝鮮半島の非核化は金日成主席、金正日総書記の遺訓である」として、「朝鮮半島全体の非核化ならば、対話と交渉に応じる用意がある」ことを中国側に伝えていた。北朝鮮が強攻策から一転して対話路線に転じたことを評価し、中国が配慮したのだろう。

「朝鮮半島の非核化」となると、韓国の非核化や韓国への米国の核の持ち込みも含まれ、北朝鮮にとって異論はないはずだ。

また、共同声明には「関係国の核兵器開発が朝鮮半島を含む東北アジア及び世界の平和安定に深刻な脅威となる」と記されているが、「北朝鮮の核兵器開発」ではなく、「関連国の」という表現が使われたことについても韓国側は「関連国とは北朝鮮を指している」と説明しているものの中国側では「関連国」には韓国や日本も含まれているとの見方も出ている。

このように共同声明は韓国にとって100点満点とはならなかったものの、それでも北朝鮮に偏重していた中国の朝鮮半島政策を中立化させたばかりか、中国を北朝鮮から引き離し、取り込んだことの意味は大きい。何よりも、中国の新政権が金正恩第一書記よりも先に朴大統領を受け入れ、首脳会談を行ったことは画期的で、韓国にとって大きな外交成果である。

中国新政権が、北朝鮮との首脳会談よりも、韓国との首脳会談を優先さたことは、朝鮮半島史上初めてのことだ。

今年3月に退任した前任の胡錦濤主席は任期中に2度(2005年と2008年)訪韓しているが、北朝鮮には2005年10月にたった一度訪朝しただけだ。また、その前の江沢民主席も同様で。訪朝は2001年の一回限りだ。それも、1995年に先に韓国を訪問していた。

北朝鮮は、故金正日総書記が胡主席の訪朝後の2006年に訪中したのに続き、2010年に2度も中国も訪れており、死去した年の2011年8月にも訪ロの帰途、中国に立ち寄っている。相互主義を建前とする首脳外交としては極めてアンバランスである。

朴大統領の訪中後に今度は、金正恩第一書記の訪中が取り沙汰されるかもしれないが、ひょっとすると、北朝鮮が戦争勝利記念日と定めている7月27日の休戦協定60周年を前後して、習主席の訪朝説が浮上するかもしれない。

だとすれば、中国外交はしたたかで欲張りだ。北朝鮮を手放すのではなく、「韓国も、北朝鮮も頂く」ということなのか?

Photo by Erin A.Kirk-Cuom

Source from http://www.defense.gov

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