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北朝鮮がアメリカに投げかけた直接対話「4つの狙い」(辺 真一)

北朝鮮が米国に直接対話を呼びかけた。

それも、外務省スポークスマンではなく、最高権力機関の国防委員会の名による。国防委員会のトップは、国防第一委員長の金正恩第一書記であるので、彼の承認、意思であることは明らかだ。

北朝鮮の今回の提案の狙いについて様々な分析が行われているが、現在のところ、主に四つに集約されている。

ひとつは、7月27日の休戦協定60周年を前に米朝直接交渉を実現させることで外交的成果を手にしたい。

次に、先の米中首脳会談で交渉による解決を呼びかけた中国に供応して対話を提唱した。

3つめに、米国が提案を受け入れれば、代表の格に固執したため南北対話を実現できなかった韓国を孤立させることができる。

最後に、直接交渉を米国が拒めば、「米国が外交交渉による解決を阻んでいる」と、米国に責任を転嫁することができる。

どれひとつとっても、北朝鮮にとって損することはない。

米国が提案を受け入れ、念願の平和協定の締結交渉に入れれば、権力を継承して以来、これといって業績のなかった金正恩第一書記にとっては大きな外交成果を手にすることができる。北朝鮮にとっては戦争勝利記念日にあたる7月27日を盛大に祝賀することもできる。

また、結果として、米朝の仲裁役を担った中国、習近平国家主席の顔を立てることで、疎遠関係にあった中国との関係を修復できると同時に、北朝鮮に譲歩しない韓国への牽制、圧力にもなる。

逆に、米国が交渉による解決を拒めば、それを根拠に核とミサイル開発を今後も継続することができる。

北朝鮮は今回の提案で「米本土を含めた地域の平和と安全の保障に対する真の関心があるのなら、前提条件を付けた対話や接触について述べるべきではない」とか、「米国が核なき世界と緊張緩和を心から望んでいるのなら、与えられたチャンスを逃さずに北朝鮮の大胆な勇断と善意に積極的に応じるべきだ」と主張している。

「米本土を含めた地域の平和と安全の保障」とは、米国にとっても脅威となりつつある北朝鮮の核ミサイルを指す。「与えられたチャンスを逃さずに」とは、今この時期に、交渉に応じなければ、核とミサイル開発を止めることはできないだろうと暗に警告しているようでもある。

習近平主席との米中首脳会談で、北朝鮮の核問題を協力して解決することで合意したオバマ大統領は「朝鮮半島の非核化は金正日総書記の遺訓である」と強調し、オバマ大統領のキャッチフレーズでもある「核なき世界の建設」について議論する用意があると踏み込んだ北朝鮮の「くせ玉」をどう受け止めるのだろうか。

米国が求めている非核化への「誠意」あるいは「証」として、ムスダンミサイルやノドンミサイルを東海岸のミサイル基地から撤去し、さらに4度目の核実験を自制するなど「挑発」を控えている今が、交渉に転じる好機ととらえ、前向きに出る可能性もゼロではない。

オバマ政権が今後も、国連の制裁を一層強化し、8月の米韓合同軍事演習を強行し、北朝鮮を経済的に外交的に、軍事的に封じ込めることで、北朝鮮に核放棄を迫る「戦略的忍耐」を取り続けるならば、米国は、その反動として、間もなく、封印されていた黒鉛型原子炉の再稼働を、年内には完成間近かの軽水炉の稼働とウランの濃縮活動を、さらには4度目の核実験を、そして来年には米本土に到着可能なICBMの発射実験を目の当たりにすることになりかねない。

瀬戸際外交から一転対話路線に戦術転換した北朝鮮の「誘い」に米国はどう対応するのだろうか?

ワシントンと平壌は交渉に向けての駆け引き、条件闘争に入ったようだ。

1998年、平壌市内で行なわれたマスゲーム

photo by ProbibitOnions

source=http://commons.wikimedia.org/wiki/File:North_Korea_mass_games_1998.jpg

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