第11回県民健康管理調査の小児甲状腺ガンの男女比について(おしどりマコ)
2013年6月5日に開催された第11回県民健康管理調査検討委員会についての速報記事を書いた。
【速報】第11回県民健康管理調査について(おしどりマコ)
http://op-ed.jp/archives/9069
その記事にもう1件、特筆すべき気になる情報があったので追加する。
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甲状腺ガン発生の男女比について
第11回検討委員会の中で、甲状腺検査専門委員会の委員長である鈴木眞一教授と
検討委員会の清水一雄委員(日本甲状腺外科学会理事長、日本医科大教授)との
やりとりに興味深いものがあったのので書き起こして抜粋する。
清水一雄委員 (日本甲状腺外科学会理事長)
「(甲状腺の)乳頭ガンの男女比は1:7.7と1:8.8で女性に多いですが、
この表(県民健康管理調査の甲状腺検査の結果の表)を見ますと男の子が多いんですね、
印象が…頻度がですね、チェルノブイリの表を見ましても1:3.3ぐらいで。
(今回の結果)男の子がちょっと多くなってきたかなと云う印象がありますが、
その点先生どういう風にお感じになりますか。」
鈴木眞一 福島医科大学教授
「確かに1:7と云う比率も有りますが、学説によっては1:4というような…
でも大体女性が多いと云うのが一般的な特に成人の乳頭ガンでは多いという事ですが。
今、23年度、24年度、24年度は特にやや男性が多いという事ですが、
これは全く途中経過のデータですので全体が揃った所でないとなかなか分からない。
ですから一応そういうことは一つ頭に入れながら今後も経過を追わなければいけません。
で、この時点でどうだ、と云う表現は無いです。
で、そのコメントのもう一つとして、男性が多い場合に非常に悪い症例が多いのが一般的ですね、
女性はよくて、男性はこれは相当悪いのが入ってるんじゃないかという事はありますが、
今迄のデータを見ても非常にそこの臨床症状と云うのは
決してこのグループは非常に進行の速いグループというのは含まれておりませんので、
その点からいっても余り精査が何か影響してるというよりは、まだそういう数ですので、
また変わる可能性があるかもしれないので、もう少し診られた方がよろしいかもしれません。」
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清水一雄教授について
少しご紹介したい。
チェルノブイリ原発事故のあと、小児甲状腺がんが増加し、
甲状腺摘出手術を受けた子供たちは、首に大きな手術痕を残した。
1998年、清水教授は内視鏡を使った甲状腺ガンの手術に成功した。
内視鏡手術は技術が必要だが、手術痕が圧倒的に小さい。
そして清水教授は翌1999年からベラルーシの首都ミンスクに行き、
医療支援活動を行っており、現在も継続しておられるのである。
[caption id="attachment_9190" align="aligncenter" width="620"] マイクを持つのが清水一雄教(隣で口を押えているのが環境省の桐生康生氏)[/caption]
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被曝の可能性の指摘には「調査途中」と回答
清水一雄教授の指摘はこうである。
甲状腺ガンのうちの乳頭ガンの男女比
1:7.7 1:8.8
→女性が多い
チェルノブイリ原発事故のあと
1:3.3
→つまり男の子の割合が増えている
現在の県民健康管理調査の値
(※ 確定した乳頭ガンではなく、悪性ないし悪性疑い)
平成23年度
男子5人:女子7人……1:1.4
平成24年度
男子9人:女子7人……1:0.78
福島県の調査でも、チェルノブイリ事故後と同じように、
男子の割合が高くなっているのでは、という指摘である。
これに対する鈴木眞一教授の回答は
「途中経過のデータですので全体が揃った所でないと分からない」
[caption id="attachment_9189" align="aligncenter" width="620"] 検討委員会終了後の会見にて。マイクを持つのが鈴木眞一教授[/caption]
ここで疑問がある。
調査途中であるならば「原発事故による健康への影響は無い」とおっしゃるのであろうか。
(筆者は鈴木眞一教授の講演会を何度か取材したが、たびたびおっしゃっている)
(下記は鈴木眞一教授の講演会の取材の一記事である)
精度が低い原発事故直後の小児甲状腺サーベイ(おしどりマコ)
現時点で、放射線の影響は否定しながら、
清水教授の、甲状腺がんの発生に男子が多い、という指摘には
「調査途中なのでわからない」と回答している。
被曝の影響はない、ということは断言し、
被曝の可能性を指摘されると、「調査途中」と回答するのは、
県民健康管理調査の甲状腺専門委員会の委員長としてアンフェアな回答ではないか。
原発事故の影響も「調査途中なのでわからない」とすべきでは、と筆者は感じた。
【NBオリジナル】