【速報】第11回県民健康管理調査について(おしどりマコ)
2013年6月5日、福島県福島市コラッセ福島にて、
第11回県民健康管理調査検討委員会が行われた。
速報として重要なものをあげる。
筆者が特に重要に感じたのは
甲状腺検査の結果、
血液検査の結果が出てこないことについて、
妊産婦調査の結果
である。
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県民健康管理調査、甲状腺検査の概要
県民健康管理調査とは、福島第一原発事故後に行われている福島県の住民の健康調査である。
これは「基本調査」と「詳細調査」の2本が柱である。
「基本調査」とは、県民が行動記録を付け、そこから被ばく線量を推計評価をする調査。
「詳細調査」とは、小児の甲状腺検査や、避難区域の住民への血液検査を含んだ健康診査、心の調査などである。
小児甲状腺検査とは、2011年3月11日の東日本大震災の発災時に
福島県内の18歳以下の県民全てに、甲状腺の超音波エコー検査を実施するもの。
対象は約36万人であるが、検査結果が確定した人数は
平成23年度: 40,302人
平成24年度:134,074人
ということであった。
対象者が約36万人のうち、17万4千人が検査結果確定ということで、
まだ半分も検査が終了していないのである。
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悪性ないし悪性疑いが28名(うち1名は手術後に良性と確定)
第11回県民健康管理調査では、このような情報が発表された。
『県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果等について』
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250605siryou2.pdfより
第10回では、平成23年度の検査のうち、10名が悪性ないし悪性疑いと発表された。
本当に「被曝の影響はない」のか(おしどりマコ)
http://op-ed.jp/archives/7449
しかし、第11回の発表では、平成23年度の検査で、は12名が悪性ないし悪性疑い、
ということで、2名追加された。
「悪性ないし悪性疑い」と診断されると、手術が確定する。
手術をして、組織を摘出しなければ、悪性なのか悪性疑いなのか診断がつかないそうである。
(第10回発表)
平成23年度:悪性ないし悪性疑い10名(手術3名:乳頭がん3名)
(第11回発表)
平成23年度:悪性ないし悪性疑い12名(手術8名:良性1名、乳頭がん7名)
平成24年度:悪性ないし悪性疑い16名(手術5名:乳頭がん5名)
つまり、甲状腺がんと確定したのは3名→12名で、9名増加なのだが、
手術が確定したのは10名→28名で、18名増加したのである。
しかし、手術をして「良性」となるのは
「非常に珍しい例」(検討委員会での鈴木眞一教授談(福島県立医科大学)だそうで、
手術をすれば、かなりの確率で悪性と診断されるそうである。
「今回の原発事故の影響とは関係ない」と繰り返し説明する鈴木眞一教授であったが、
筆者は会見での清水一雄教授(日本医科大学)の説明のほうが印象的である。
「本当に原発事故と影響が無いかどうか、
ーおそらく私も影響は無いとは思いますがー
比較するデータが無いので、影響が無い、と正確には言えない。
大規模な非汚染地域の同じような小児甲状腺エコー検査のデータと比較して、
日本では同程度甲状腺ガンが出現するのか、
それとも、やはり原発事故の影響があるのか、
そういう評価をしてからでないと何も言えないと思います。
現在では『わからない』というのが正確です。
環境省で、3地域で甲状腺検査をして比較データを取っていましたが、
あれもある程度参考になると思いますが、データ数が少なすぎる。
もっと大規模にやって頂きたい。
そして、3地域の比較データの中で、
B判定(5.1ミリ以上の結節、20.1ミリ以上ののう胞)の子どもたちが
その後どういう結果になったのか。
人道的にも、きちんと二次検査をして頂きたいです。」
筆者は、結果を被曝線量の推定評価別に出してほしい、と以前からずっと要望しているが、
鈴木眞一氏は「その結果は、出す予定は無い」とのことであった。
地域別の結果は出たのだが、それは2011年3月11日当時の住所の地域別なのだ。
筆者は検査対象者に取材を重ねているが、自主避難をされている方も多く、
その期間、避難先もいろいろで、3月11日当時の住所だけでは、評価ができない。
県民健康管理調査では「基本調査」として、住民に行動記録を提出してもらい、
事故後4ヶ月間のそれぞれの外部被曝線量の推計評価している。
甲状腺検査や血液検査の「詳細調査」と、
外部被曝線量評価の「基本調査」をなぜ比較しないのか。
今回の甲状腺検査の結果も、本当に「被曝の影響は無い」とするならば、
すでに推計してある外部被曝線量と比較するべきではないのか。
と、以前から筆者は追及しているが、水俣病患者を診察している医師から
こういうメッセージも頂いたことを付け加えておく。
「マコさん、分かってはおられるでしょうが、
被曝線量評価との相関があれば因果関係はより強固になるでしょうが、
相関がなくても因果関係を否定することにはなりません。」
水俣病患者を多く診察してこられている医師である。
数値は単なる目安でしかなく、同じ量でも、弱い人間もいれば強い人間もいる。
これは、アレルギーの専門医にも教えられた言葉でもある。
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注目されていない血液検査
筆者は、「詳細調査」の中の健康診査、その中の血液検査に注目している。
以下の過去の記事も参照して頂きたい。
福島:検討委員会「血液検査の現状報告」(おしどりマコ)
http://op-ed.jp/archives/5084
健康診査は、全県民対象ではなく、
避難区域の住民と、行動記録をつける基本調査から、
被ばく線量が高いと推計される住民を対象になされるものである。
井坂晶先生(双葉郡医師会長)がこの検査を
「(原発作業員になされる)電離検診と同じような意味合いのもの」
と表現したほどである。
この健康診査の血液検査には「白血球の分画」の項目が上乗せされている。
単なる健康診断では診ない項目である。
人間の体の中で、一番敏感に放射線の影響が出るのはリンパ球である。
その次が好中球と言われている。
それらを調べるのが「白血球の分画」なのである。
この健康診査は、「生活習慣病を調べる」というのが名目であったが、
それならば白血球の分画はあまり関係ない。
なぜ調べるのか、とたびたび筆者が質問していた。
すると第6回検討委員会でこのような資料が出た。
「白血病分画等の項目を上乗せした健康調査」の対象
・原発事故による放射線により、白血病発症リスク増大が考えられるもの
(今回の事故による被ばく線量について情報が乏しい段階での検討)
・避難を余儀なくされ、疾病予防上不利益を被ったと考えられるもの
(通常の生活習慣リスクに加えて、炎症などの評価も追加)
第6回検討委員会配布資料より
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240426shiryou.pdf
第10回で発表された血液検査の結果は大まかなものであったが、
「白血球数減少、好中球数減少、リンパ球数減少の割合に、
年齢区分や性による大きな偏りは無かった。」という考察がついていた。
第10回検討委員会後の記者会見で、筆者は、
「白血球、好中球、リンパ球の減少について、年齢区分や性による区分の評価だけではなく、
被曝線量や地域についての評価はしないのか」
とたびたび質問し「これから検討する」との回答であったが、
今回、第11回検討委員会では、何も発表されなかった。
同じ質問を、第11回検討委員会後の記者会見でぶつけたが、
「これから検討する」のみであった。
第10回の記者会見では、
「甲状腺検査の結果を地域別に出してほしい」と多くの記者から要望があり、
第11回では地域別の結果が出た。
血液検査について、他に質問する記者がいないので、このような現状である。
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妊産婦調査で気になる点
資料5 平成24年度「妊産婦に関する調査」実施状況について
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250213siryou5.pdf
今、気付いたのだが、県の検討委員会のネットに掲載されている資料には、
1ページ目しか掲載されていない。
配布された資料は4ページあった。これは掲載ミスなのか気になる部分である。
その3ページめ、「調査の評価等について」に気になる部分があった。
平成23年度で県内各地域に若干の差があるものの、(どのような差か)
全国平均と比べ早産率は高くなかった。
また、単胎生出児の先天奇形・異常の発生率は全県で2.7%であり、
一般的な出生児の先天奇形・異常の発見率3-5%と同様であった。
先天奇形・異常の中で最も高かったものは「心臓奇形」0.86%であったが、
これは心臓奇形の自然発生率1%と変わらなかった。
筆者は検討委員会後の会見で質問した。
ーー平成23年度の福島県の早産率・心臓奇形の発生率などを、全国平均と比較しているが、
事故前のデータ、平成22年度以前の福島県のデータとの比較はされたのか。」
藤森敬也先生(福島県立医科大)「いや、事故前のデータとの比較はしていない。」
ーーそれはなぜか。
藤森敬也先生「事故前のデータが無いからである。
県立医科大のデータなどはあるが、大学病院で出産する例は、一般の病院で出産するより、
総じて早産、奇形などの例が多いので、(危険を伴う出産が大学病院で行われる場合が多い)
大学病院でのデータはもともと早産率などは高い。
なので、このデータとは比較できない。」
ーー平成22年度以前の福島県のデータは存在しないのか。
藤森敬也先生「存在しない。なので全国平均としか比較ができない。」
全国平均と比較することにあまり意味を感じないのは筆者だけであろうか。
なぜなら、事故前と比較して増加したのか、低減したのか、変化したのか、
それは全国平均と比較しても分からないからである。
事故前の福島県が全国平均より突出して低かったとしたら、全国平均と変わらない、ということは増加傾向であろう。
その逆もしかりである。
チェルノブイリ事故のあと、心臓疾患、先天性の心臓疾患が多く発生したことも知られている。
「事故による影響はない」という前提での調査ではなく、詳細な長期の調査を要望する。
甲状腺検査以外の質問がほとんど無し
委員会後の記者会見は時間が短く、紛糾した。
記者からの質問のほとんどは甲状腺ガンに関するもので、
甲状腺検査の責任者である鈴木眞一教授に質問が集中した。
一方的に切り上げられた記者会見のあと、
(福島県庁の佐々恵一健康管理調査室長、
委員の清水修二教授:福島大学、清水一雄教授:日本医科大学の3名だけが
質問が無くなるまで在席してくださったが、
各調査をした専門委員会の責任者と委員のほとんどは帰ってしまわれた!)
記者の方々は県庁の佐々室長に詰め寄った。
「記者会見はきちんと開いてほしい。」
「ブリーフィングをきちんとしてほしい。」
などである。
福島県庁の佐々室長は、
「県としてもその必要性は感じるが、長時間の会見も含むと委員の先生方のスケジュール調整が非常に難しくなり、検討委員会すら開きにくくなる」とのこと。
「それでは、委員会とブリーフィングを別に開いてはどうか」と記者サイドから提案。
そして、「委員全員を集めるのではなく、甲状腺検査の鈴木眞一教授にだけ質問があるので、鈴木先生のみのブリーフィングでいい」と記者数人が提案。
すると佐々室長は
「確かに記者さんがたの質問は甲状腺に集中しているので、
鈴木眞一教授のみに質問が集中している。
全員の先生方のスケジュールを調整するのは難しいので、
鈴木先生のみのブリーフィングを検討してみる」とのこと。
私は途中からずっと、
「甲状腺だけでなく、その他の健康調査についても質問があるので、
血液検査や妊産婦調査や、各専門委員会の責任者にもブリーフィングを開いてほしい」
と言い続けたが、佐々室長は
「そこまで手はまわりません」
と、サッときびすを返して行ってしまわれた。
確かに、血液検査や妊産婦調査に関する質問は、筆者以外に出てこない。
そうなると、本当に情報が出てこないのである。
甲状腺の問題も非常に心配な問題であるが、
チェルノブイリ事故の因果関係が認められたのが小児甲状腺がんだというだけで、
白血病やさまざまな健康影響は発生していることは事実である。
甲状腺がんだけにとらわれず、様々な健康影響について、注視していきたい。
しかし、筆者一人の注視では、甲状腺がんに関する情報しか出てこないのが現状である。
【NBオリジナル】