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【中東ジャーナル】(第一回)砲撃と銃撃の間で…(上杉隆/文・写真)

エアバス機はアラビア半島上空を飛んでいる。眼下には眩しい白い砂漠が広がっている。

最初、西に向かった機体はシリア上空を避けてシナイ半島を横切り、地中海上空に出ると一転、大きく旋回し、今度は北上を始めた。

最初の目的地まではあとわずかだ(安全管理上、中東滞在中は〈現在地〉を伏せることにする)。

10年ぶりの中東取材、よりによって時期が悪い。米英のシリアへの武器供与が解禁になったのが先週のこと。現地からの情報によれば、シリアでは難民が大量に発生し、周辺諸国にも危機が及んでいるという。

実際、波及した危機は現実のものになっているようだ。

きょう(6月4日)も、隣国レバノンでは第2の都市トリポリで銃撃戦が発生し死傷者が出てるし、国境の街ヘルメルでは8発のミサイルが落ちた。

一週間前にはベイルート近郊にも2発のロケット弾が着弾、けが人が発生している(死傷者数不明)。

思えば10年前も時期が悪かった。自衛隊の先遣隊がサマワに向かう数週間前、ヨルダンのアンマンからイラクのバグダッドに向かうアリババ街道では、誘拐事件や外国人を狙ったテロが頻発していた。

そんな中、私はサマワ一番乗りを目指していた。だが、イラクの地を踏む前、無関係の場所で負傷し、翌2004年を丸一年、棒に振ったものだった。

地中海に面したこの街も、紛争の現場から一歩離れれば、そこには平和な雰囲気が漂っている。

だが、米国やロシアなど、大国の利権がその背後に大きく潜んでいる今回の紛争は、悲惨な泥沼化の一歩手前にあると言える。

静かな夜の街を歩きながら、ふと、人類の闘いの歴史を思い出すのだった。

(続)