「アベノミクス3本の矢」と社会保障費大幅削減策の中身(藤本 順一)
安倍政権が目指す「日本経済再生」の処方箋づくりが急ピッチに進んでいる。29日には政府の産業競争力会議が「日本産業再興」「戦略市場創造」「国際展開戦略」を3本柱とする成長戦略の骨子をまとめた。
取りまとめ役の甘利明経済再生担当相は「施策の羅列ではなく、成長への道筋を国民に分かりやすい形で打ち出す」として、今後、2030年を最終目標とする中長期の工程表だけでなく、個々の政策に数値目標と達成年次を示す政策成果指標(KPI)を設定する方針を示した。6月14日に閣議決定する予定だ。
また、同時期に経済財政諮問会議がまとめる今後の財政運営の基本方向を定める「骨太の方針」には、金融緩和、財政出動、成長戦略のいわゆる「アベノミクス」の三本の矢で早期にデフレ脱却をはかるとともに財政健全化を進め、「停滞の20年」から「回復の10年」への転換を目指すことが盛り込まれる。
それが「日本経済再生」につながるのであればけっこうなことだが、気になるのは財政健全化の道筋だ。
27日に「財政制度等審議会」がまとめた報告書は財政健全化について「経済成長のみでは実現できない。政府は財政収支の改善に真正面から取り組まなければならない。具体的な成果をあげなければ、日本経済への市場の信認を失って金利急騰を招き、金融緩和の効果を減殺することになりかねない」と指摘し、消費税率を予定どおり引き上げることや社会保障費の大幅カットを求めている。
具体的には運営する市町村によって保険料の格差が大きい国民健康保険の都道府県への移管、介護保険で給付の約3割を占める要介護2以下の給付を削減し重度者に重点配分や薬価の保険適用の上限を後発医薬品の価格までとして、先発品との差額を幹事の自己負担とすることなど。報告書は他に高校授業料無償化の代替案として文科省が検討している「給付型奨学金」を不要とした。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】