ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

米議会からの批判で「戦後レジュームからの脱却」は腰砕け!(藤本 順一)

読売新聞社が行った直近の世論調査で安倍内閣の支持率は72%(前月比2ポイント減)、不支持は20%(同3ポイント増)で依然として高水準を維持している。大雑把に言えば、政権発足以来の経済政策「アベノミクス」を評価してのことだろう。今夏の参院選の投票先でも自民党が47%で他を圧倒した。ねじれ国会の解消は確実な情勢である。

一方で安倍自民党が意欲を見せる憲法96条の改正について51パーセントが反対している。参院で3分の2の改憲勢力を得るにはなお不安が残る。安倍自民党にとっては悩ましいところだ。

だからか、安倍晋三首相は10日のテレビ番組で「まずは長引くデフレ、経済の低迷から脱却する。(選挙までの)約7ヶ月間の成果について問いたい」と述べた。

96条の先行改正に慎重姿勢をみせる連立相手の公明党に対しても「しっかり信頼関係を保つためにも、丁寧に説明しながら議論したい」と配慮を滲ませている。

憲法改正をゴリ押しして国民世論の反発を招き、さらに公明党との選挙協力に支障を来すようでは元も子もないと腰が退けたのか。

もっと言えば、米議会調査局が先にまとめた報告書で「ストロング・ナショナリスト(危険な国粋主義者)」のレッテルを貼られたことも安倍首相には堪えたはず。

この報告書は議員活動用の参考資料だが、「戦時中の日本の行動が不当に批判を受けていると主張する集団との関係」を指摘、日本の植民支配と侵略を謝罪した1995年の村山首相談話や米国が主導した東京裁判を否定し、戦後レジュームからの脱却を訴える安倍首相のタカ派的言動が「日本と韓国、さらに他の(アジアの)国々との関係を悪化させるだろう」と分析している。

そしてきっとそうなるであろうことは、この報告書を待つまでもなく日本人の多くが危惧し、不安を感じているところでもある。

菅義偉官房長官は「レッテル張りだ」と反発していたが、そうでないと言うのであれば、歴史認識の見直しや憲法改正による国防軍の創設を選挙公約の前面に押し出し国民の審判を仰いだらいい。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】