ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

地下水を海に放出する計画は透明性が確保されているのか(おしどりマコ)

5月13日17時半から、東京電力の定例会見にて、地下水パイパスの進捗状況についての説明が行われた。


現在、福島第一原発には毎日400tの地下水が流れ込んでおり、それが汚染水増加の原因の一因となっている。地下水が建屋に流れ込む前の段階、山側で地下水を汲み上げ、海に流す、という計画が地下水バイパスである。

しかし、地下水バイパスで減少させる汚染水は、毎日100t、つまり地下水バイパスの計画を実行しても、毎日300tは地下水が流れ込み、そのぶん発生する。しかし、少しでも低減させることができるなら、必要な計画だと、東京電力は主張する。


********
地下水バイパス計画を福島県漁連は先送り

関係各所との合意をとるために、福島県漁連の組合長会議でも説明会が行われたが、結論は先送りされた。
県漁連のコメントは、以下である。

1、各会員の理解が進んでいないとの意見があったことから、国と東京電力から地下水バイパスの必要性などについて、会員に説明をして頂きたい
2、地下水バイパスの稼働は、県漁連が決める事ではなく、国が合意して決めるべき事である
3、地下水バイパスの稼働そのものは、抜本的な地下水対策ではないという意見もある。今後、抜本対策も明示して頂きたい

********
水質結果と水質確認方法

山側で汲み上げる地下水の汚染度は「周囲の河川と同じレベル」で、放射性物質濃度は検出限界以下もしくは法令値告示濃度よりも十分に低い値、セシウム137については許容目安値1Bq/l以下ということである。

告示濃度とは「実用発電用原子炉の設置、運転などに関する規則」を受けて、経済産業大臣が告示で定めた放射性物質の濃度限度のことである。
(1)放射線業務従事者が呼吸する空気中の放射性物質の濃度
(2)周辺監視区域の外の空気中の放射性物質の濃度
(3)周辺監視区域の外側の境界における水中の放射性物質の濃度
が定められている。
上記の表中の60000Bq/lという告示濃度は、排液中または排水中の、3カ月平均値の濃度限度である。

しかし、東京電力は「周囲の河川と同じレベル」と主張するが、東京電力の過去の資料と比較しても、トリチウムの濃度は事故前の海水、河川水、地下水より高いことがわかる。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130228_08-j.pdf


もう一点、水質確認結果で気になるところがある。
東京電力の調査より、第三者機関の調査が総じて低くなっている、という点である。

水質確認方法を見ても、「第三者機関」としか記載がない。
(期間、とミスタイプされているが)

筆者が「この第三者機関とはいったいどこなのか」と質問した。

すると回答は「化研と環境総合テクノス」という回答であった。

化研
http://www.kakenlabo.co.jp/
環境総合テクノス

http://www.kanso.co.jp/aboutus/index.html

ここで気になったのが、環境総合テクノスとは「関西電力グループ」であり、
株主が関西電力なのである。

第三者機関として、関西電力のグループ会社は適切か

電気事業連合会の会長などを歴任しているのは東京電力と関西電力と中部電力である。同じように原発を推進してきた電力会社のグル―プ会社が、果たして「第三者機関」といえるのだろうか? 筆者は重ねて質問した。

ーー同じように原発を推進してきた関西電力のグループ会社が、第三者機関として成立すると考えているのか

 

東京電力「第三者機関だと考えている。」

ーー私はそうは思えないのだが、では東京電力はどういった会社を第三者機関と考えるのか

東京電力「東京電力以外の会社は、すべて第三者機関である」

 

第三者機関とは、透明性を確保するための独立した機関のことである。

第一者:当事者
第二者:当事者と利害関係のある者

第三者:当事者と利害関係の無い者
(利害関係のある者で検査・監査などをする、第二者検査、第二者認証、第二者監査などもある。顧客が調査する場合などである)

福島第一原発近辺の地下水を汲み上げ、海に放出する、という計画のための水質調査の第三者機関として、関西電力のグループ会社に調査を依頼することは適切だろうか。
「利害関係の無い、独立した第三者機関」とはいえないのではないだろうか。

********
地下水を汲み上げた場合の地盤沈下の評価は?

筆者は、地下水を汲み上げた場合の地盤沈下についても質問したが回答は
「地下水をバイパスするだけなので、地盤沈下は起こりにくいと考えている」
という謎の回答であった。

どのような評価、計算をしたのか、重ねて質問すると、確認する、とのこと。

漏えいした地下貯水槽について、以前筆者は施工時にどのような検査をしたのか全て出してほしい、と要望した。
返ってきた回答には、「満水時の地盤沈下量の測定」が入っていなかった。
地下貯水槽の構造では地盤沈下量は測定しにくいが、14000tや11000tという大量の負荷がかかったときに地盤はどうなるか、何らかの評価が必要だったのでは、と筆者は思う。

地下水を3系統で一回に1000t汲み上げて海洋に放出ということだが、定期的に地下水を汲み上げていくと、地盤沈下をどう評価しているのか、福島第一原発の冷却系の配管や、建屋、タンクなどに影響が出ないか、筆者は懸念している。

地下貯水槽の満水実験での地盤沈下の評価をしていない点も鑑み、東京電力は地盤沈下についてどういった部署がどう評価しているのか。

これについても透明性、信頼性が無いので、東京電力が主導するのではなく、第三者機関が評価すること、ひいては福島第一原発の収束計画は東京電力ではなく、国、もしくは新たな第三者機関が主導権を握ることを要望する。

********
非政府組織、非営利団体を交えた第三者機関の調査を要望

5月13日付けで、国際環境NGOグリーンピースジャパンと一般社団法人サーフライダーファウンデーションジャパンが要請書を提出した。
東京電力社長と内閣総理大臣宛てである。
内容は、福島第一原発の地下水海洋放出に関して、NGO・市民団体・専門家に随時検証させ、結果を公開させてほしい、というものである。

その要請書に関してどのように対応するのか、と質問すると、要請書が来ていることは確認しているが、内容を把握してから回答する、その返事は未定とのことであった。

では、原発事故を起こした会社と、原発を推進してきた国の調査、評価だけではなく、非営利団体や非政府組織、その他の専門家を交えた地下水の調査・分析をする予定は無いのか、そうしたほうが、東京電力の信頼性向上、透明性確保につながり、ひいては、関係部署に説明する際に説得力が増すので東京電力にとってメリットがあると思うのだが、と質問すると、それは考えていない、とのことであった。

地下水の採取にしても、揚水井からどれくらいの海抜の地下水を汲み上げているのか、地下水の深度はどれくらいかによって、結果は変わってくる。

 

現在、採取は東京電力のみが行っているが、そこにも第三者機関の評価が必要ではないだろうか。

汚染水を低減させるため、地下水を汲み上げ、海洋投棄することは非常に重要な策だと思う。しかし、それは本当に地下水が汚染されていないことが大前提である。

なので、非政府組織、非営利団体、研究者など、東京電力が選定しない第三者機関、専門家を立ち会わせ、評価・分析させることは、透明性が確保でき、
東京電力も計画を実行するための信頼性向上につながるという大きなメリットがあるのではないだろうか。

筆者は、地下水バイパスの計画を実行するためにも、ぜひとも、東京電力が選定しない団体、研究者の評価・検証を東京電力が受け入れることを望む。

********
おまけ。東京電力の一般論。

皮膚の外部被曝を測定するためのリングバッジについて、筆者は以前から取材している。
13日にもリングバッジに関する質問をいくつか筆者はしたのだが、興味深い質疑になったので紹介したい。

ーー(略)リングバッジの測定を請け負う契約会社は千代田テクノルか、長瀬ランダウアか、その他か

 

東京電力「契約に関わることなので公表できない」

ーー千代田テクノルや長瀬ランダウアは、ガラスバッジ・リングバッジなどの事業で、

自治体・業者の除染作業の線量計測、子供のガラスバッジの計測、病院や大学・研究所の線量計測なども行っているが、すべて、どの自治体、病院、企業も契約会社は公表している。もしくは質問すれば教えてもらえる。
千代田テクノルや長瀬ランダウアなどは、東京電力には契約会社として名前を出さないでほしい、と要請しているのか、もしくはそういう契約を結んでいるのか

東京電力「確認させてほしい。一般論として、我々はそういう契約を結んでいると考えている」

 

ーー???どのような契約を結んでいるか確認をせずに、公表できない、と回答したのか

東京電力「そこは一般論の契約である」

ーー???一般論として、どこの自治体、どこの会社、どこの病院も、バッジの計測会社は公表しているので、私は一般論として、計測会社を公表するものだと思っていたが。

 

東京電力「当社と協力企業との一般論という意味である」

 

ーーでは特に契約書に一文が無い場合でも、東京電力の一般論として、今まで契約企業は公表してこなかったということか。

 

東京電力「そういうケースもあろうかと思う」

このように、東京電力には透明性が無いことが感じられる。

原発事故の収束作業・廃炉計画は、東電が信頼性を回復し透明性を担保するためには、
第三者機関、非政府組織が入って検証すること、
東京電力主導ではなく、国などが主体となり、収束計画を立てるべきだと筆者は思う。

(少なくともそのほうが、まだ、情報は開示されるであろう!!)

【NLオリジナル】