死者250超のバングラデシュ建物崩壊! その裏には警察からの避難退去命令を無視した役人らの怠慢さが(瀬川 牧子)
バングラデシュの首都ダッカ近郊サバールで、24日、縫製工場などが入る9階建てビルが崩壊した。250人以上の死者と1000人以上の負傷者を出したと伝えられている。死者の数は捜査が進むにつれ増えている可能性がある。
縫製品(繊維製品)は、バングラデッシュが世界に誇る振興産業だったゆえに、今回の事件は、政府にとって相当な痛手であったはずだ。海外の顧客からはクレームが炎上しているという。
事件の原因は何か。利益優先とし従業員の安全対策を怠った工場所有者の怠慢が背後にあった。
事故当日の朝、3122人が出勤していた(バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会・BGMFA)。
25日付けのAP通信によると、火曜日(23日)にビルの壁に亀裂が入っているのを確認した後、警察が避難命令を出したもの、縫製工場を所有する役人らが命令や忠告を無視し、数千人の労働者を働かせ続けていた。
事故直後から現場をつぶさに観察している写真家のモニルール・アラムさんの報告によると、24日当日は1600人が瓦礫の山の中で閉じ込められたままだった。当日の救助活動で引き出された犠牲者はほとんど死体だった。死者の数だが、救助が進むにつれて、人数が増える可能性が高いと現場救援隊員らは打ち明ける。
事故は水曜日朝に起きたが、同ビルの中の縫製工場で働いていた従業員の数名は強制労働させられていたとアラムさんは指摘する。
繊維製品に関して、バングラデシュは中国に次いで世界第二の輸出大国だ。同ビルが位置するダッカの近郊サバールは、「ダッカ輸出加工区( Dhaka Export Processing Zone-EPZ)」と呼ばれる産業地区。繊維、自転車、プラスチックなど製造品を生産している。
アパレルなど繊維製品を西欧諸国に輸出している企業シャンタ工業(Shanta Industires)のアホシャン・ハビブ人事部長は「500〜700の企業がバングラデッシュのダッカ輸出加工区(EPZ)に投資している」と4月10日、会社の工場を訪問した海外メディアに対して語った(記者・瀬川も同席)。国の大産業である縫製業だが、世界で最も安い労働賃金で支えられている。
アラムさんは、「この事故について、心底怒りを覚える。安全対策がないから、事故が発生した時、労働者はいつも事故や惨状の前で無力だ。こうした事故が起こると必ず、縫製工場の責任者らはどこかへ逃げて隠れてしまう」と役人や企業の不誠実な対応に怒り心頭だ。
「そんなことだからか、今日(26日)繊維工場の労働者複数がビルの崩壊に対して、抗議活動に乗り出した。労働者らは道路を封鎖し、乗り物を沢山壊していった」と、近況をアラムさんは伝えている。
*トップ写真はモニール・アラムさんによるもの(top photo by Monirul Alam)。このほかビル崩壊の現場写真は、News-Log(http://op-ed.jp/archives/8087)に掲載されています。
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