国境なき記者団がインターネットの敵「監視(検閲)国家」5カ国を発表(瀬川 牧子)
『国境なき記者団』は、3月12日(世界反サイバー検閲デー)、各国政府のインターネット検閲状況をまとめた特別報告書『インターネットの敵』を発表した。
この報告書では、シリア、中国、イラン、バーレーン、ベトナムの5カ国を“監視(検閲)国家”と指摘。これらの国は反体制分子や反体制派ネットワークなどに日々サイバー攻撃を仕掛け、国民の権利を著しく侵害していると非難した。
中国は「ネット・グレート・ファイアー・ウォール」を用いてユーザーを監視(検閲)。 イランは独自のインターネットを開発し、監視(検閲)を強化。シリアは、国境なき記者団が入手した資料によると、1999年の国営ネットの導入時からフィルタリングや検閲機能のあるものであったことが判明した。
また、国境なき記者団は、今回、初めて5つの企業を「インターネットの敵」としてリストアップした。その5企業とはTrovicor社、Coat.社、Amesys and Blue社、Hacking Team社、Gamma社である。その理由は、監視(検閲)国家が、これらの企業のソフトや技術を利用しているからである。
Trovicor社のネット統制・妨害技術部品は、バーレーンで情報を発信する国民らを追跡し、逮捕するのに使用されている。
Coat社の「Deep Packet」は、シリア政府が反体制分子やネット市民らを逮捕するために利用されている。
Amesys and Blue社の「Eagle」は、リビア・カダフィ大佐の秘密警察事務所で発見された。
Hacking Team社とGamma社のソフトは、政府側がジャーナリストやネット市民らのパスワードを盗むために利用されている。
「ネットの検閲は、ジャーナリストや市民記者、ブロガー、そして人権擁護活動家らにとって非常に危険だ。情報を管理下に置きたい体制側の検閲の手口は、どんどん巧妙になっている」と、『国境なき記者団』のクリストフ・デロワイエ事務局長は語る。
また、「ネット検閲の技術は、民主主義国の企業によって作られているため、ネット検閲をする国に対して、民主主義国の指導者は“デジタル武器”を輸出しないよう厳しい規制を課すべきである」とも主張している(『国境なき記者団』デロワイエ事務局長)。
1997年7月、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関する「ワッセナーアレンジメント」が結ばれた。これは通常兵器の拡散防止と民間用の最新機器などが軍事転用されないよう輸出の管理をする国際的な申し合わせで、フランス、ドイツ、英国、米国の4カ国が同意している。
そして、2010年に始まったアラブの春は、インターネットの影響力の強さを証明したが、同時に体制側にインターネットを検閲して、コントロールする必要性も教えてしまった。
そのため、米国のFISAA/CISPA 、英国のコミュニケーション・データ法案、オランダのサイバー犯罪防止法案(Wetgeving Bestrijding Cybercrime)など、民主主義国の政府もネット情報の検閲とサイバーセキュリティの必要性を考え始めている。
現在、世界各国で約180人のネット市民(反体制分子やジャーナリスト、ブロガーなど)が、情報流出などの罪により逮捕されている。
(『国境なき記者団』は、ネットニュース提供者が検閲から逃れるための手助けとして、WeFightCensorship.orgに “digital survival kit” を掲載しています)
※この記事は『国境なき記者団』が発表したものです(原文はこちら http://en.rsf.org/special-report-on-internet-11-03-2013,44197.html)
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