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TPP交渉参加でますます露骨になってきた安倍自民党の利益誘導(藤本 順一)

「負けるわけにはいかない。勝ち抜いて誇りある日本を取り戻す。先頭に立って戦い抜く」

安倍晋三首相は17日に行われた党大会・参院選必勝決起集会でこう述べ、自公両党で過半数獲得、ねじれ国会解消に強い意欲を示した。そして、国民の多くもそうなることを望んでいるのだろう。

直近のマスコミ各社の世論調査果で安倍内閣の支持率は軒並み70%を超える驚異的な数字を示している。

今夏の参院選の比例投票先(朝日新聞調査)でも自民47%に対し、維新は12%、野党第一党の民主党はたったの9%しかなく、このままでは自民の独り勝ちである。政治の安定を第一に考えれば致し方ないところだが、だからといって盲判を押すわけにもいくまい。

この日、自民党は経済、震災復興、外交・安全保障、教育を4つの危機と位置づけた上、「領土、領空、領海を守るために防衛力を強化」、「自主憲法制定に向けた取り組みの加速」、「TPP交渉は国益を護れるよう強い姿勢で交渉」、「古い自民党と決別し、党改革を断行」などの運動方針を採択している。

このうち、TPPについて安倍首相は18日に行われた衆院予算員会の集中審議で「日本は農耕民族だ。日本人が日本人であるために農業は国の礎でないといけない。経済的損得勘定だけで切り捨てるのは間違いだ」と述べ、交渉参加の焦点となっていた農業分野を保護する姿勢を強調した。

また、医療分野では懸念されている国民皆保険制度への影響について甘利明TPP担当相が「日本の医療制度の根幹であり、揺るがすことは絶対にないよう取り組みたい」との考えを示している。

TPPに反対する農協や医師会には勇ましくもあり、頼もしくもある発言だ。しかしながら、保護の理由が「農耕民族」だからとか、「医療制度の根幹」だからとか、まるで子供の戯れ言である。それならアメリカは「自動車民族」とならないか。皆保険の制度疲労も今に始まった話ではない。見過ごしてきた厚生行政と医療業界のもたれ合いの結果である。TPPの黒船襲来に被害者面できる立場ではなかろう。

自民党大会にはその農協や医師会、「国土強靱化」の公共事業で潤う建設業界など各種業界団体が勢揃いした。それでどうやって「古い自民党」と決別するのか。野党が頼りない分、安倍政権のやることなすこと、一つ一つにこれまで以上に眼を光らせておく必要がありそうだ。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】