戦争を知らない安倍首相の危ない歪んだ歴史観(藤本 順一)
安倍晋三首相は15日の記者会見で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加を正式に表明した。
日本が参加すれば交渉12カ国は今年10月、インドネシアで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、大筋合意を目指す。農協や医師会など既得権益を脅かされる業界団体は不安、不満もあろうが、日本だけが無傷ではいられない。これも時代の趨勢である。観念することだ。
一方で13日には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の軍、防衛当局次官級会合が行われている。先に安倍首相は各国の参加者との懇談で「発展著しいアセアンとわが国の関係強化は、地域の平和と安定に資する。防衛分野の関係強化につながるよう、活発で有意義な議論を期待する」と述べた。
これに対して議長国ブルネイのアズマンシャム国防次官は「多国間、2国間の協力を強化し、共通の利益がもたらされることを期待する」と応じている。言うまでもなく、念頭にあるのは中国の軍拡、覇権主義への警戒心だ。
折しも中国は日本政府が主催した「東日本大震災2周年追悼式」に参列した台湾代表を「国扱い」したことに腹を立て、3月下旬に予定された中日友好協会会長の訪日延期を決めた。台湾は中国の一部であり、一国2体制を認めた72年の日中共同声明に反するというのだ。加えて中国を後ろ盾にしてきた北朝鮮も休戦協定の白紙化を宣言。こちらは時代の趨勢とは言い難い。なんだか東アジア情勢は日中国交正常化前に逆戻りしたようにも見える。もっと言えば日清戦争前夜、今日のように軍備拡張路線をとる清国の軍艦が度々、日本近海に出没、自国船を日本漁船に見立てて撃沈するなどの威嚇行為を繰り返していた。尖閣列島をめぐる今日の動きと恐ろしく重なるのだが、当時の日本の軍事力は清国の4分の1にも満たない弱小国家だった。とろこが時の政府は次第に軍備増強、開戦辞さずの方向に傾いていく。
さて、そこで安倍政権である。防衛費は来年度予算案で大幅に積み増した。自衛隊を軍隊に格上げ、集団的自衛権の行使にも前のめりである。それが外交交渉を有利に運ぶためのハッタリだけで済めばいいのだが・・・。火遊びが過ぎる気がする。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】