日銀総裁人事にケチをつけた橋下徹氏の市長ボケが心配だ(藤本 順一)
「犠牲者の御霊に報いるためにも、一日も早い被災地復興、被災者の生活再建に力を注ぐ」
12年度補正予算案が参院本会議で可決成立した26日、安倍晋三首相はこんな談話を発表した。
東日本大震災からもうすぐ丸2年、総額13兆1千億円に上る補正予算には、その復興・防災対策に3兆7889億円が計上されている。被災地住民も早期の予算執行を待ち望んでいることだろう。まずは一安心だ。
さらに与野党ねじれでもたつくことが懸念された採決で、維新、国民新党、新党改革など一部野党が賛成に回り、衆参揃って予算案が可決されたことは、震災直後の復興予算を除けば、鳩山政権以来3年ぶりとのこと。何よりである。もちろん、予算の中身を100%支持してのことではなかろう。国会審議を通じて問題点は多々浮かび上がっている。
民主、みんな、生活、社民の4党は「政府案は公共事業の大盤振る舞いだ」として政府予算案に反対する一方、建設国債2兆1千億円を削減するなどの修正動議を提出した。否決されてしまったが、国民有権者に政策の選択肢を示したことは、責任野党のあるべき姿だ。もっといえば、今後は予算の執行を厳しくチェックすることを忘れないでいただきたい。
26日にはもう一つ、懸案だった国会同意人事で公正取引委員会委員長に杉本和行元財務次官を充てるなど14機関41人の人事案が衆参両院で民主党など野党も賛成して可決した。日銀の正副総裁人事についても民主党は柔軟姿勢に転じている。
マスコミの一部には今回の予算案採決で野党の足並みに乱れたが生じたことを政局に絡めて民主党を揶揄する報道も見受けられる。だが、むしろ国民有権者が期待しているのは、参院を「良識の府」とする野党民主党の振る舞いではないのか。
余談だが、日本維新の会共同代表の橋本徹大阪市長は黒田東彦アジア開発銀行総裁の日銀総裁起用に賛意を示している維新の国会議員団を「当選ボケだ。野党の役割がいまいちボケ始めている。野党としての哲学が見えない」と26日、記者団を前に批判したそうだ。橋本氏はまた、「維新の哲学からすれば、永田町や霞ヶ関だけの世界で人材が固定化しない日本社会を目指さないといけない」とも述べ、副総裁に起用される見込みの岩田規久男学習院大学教授と総裁に起用し、黒田氏と入れ替えるべきだとの考えを示した。それこそかつての野党ボケした民主党政権の官僚排除と同じ論理である。それとも市長ボケの前兆か。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】