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安倍首相と麻生財務相のAAコンビ 浮かれるのはまだ早い(藤本 順一)

3月決算を前に企業業績は回復基調である。これが雇用の拡大と賃金上昇につながってくれれば言うことはないが、先週8日の衆院予算員会で質問に立った共産党の笠井亮議員は「企業の収益増が従業員の賃金アップにつながっていない」と悲観的な見方を示した。

確かに過去、平均賃金は97年をピークに下がり続け、2011年はピーク時の85%にまで落ち込んでいる。この間、小泉政権から第一次安倍政権までの円安、好景気に湧いた時期をはさみ、本来は賃金や設備投資、株主配当に回っていいはずの企業収益は内部にため込まれて185パーセントにまで膨らんでいる。そして今年の春闘、業績好調にもかかわらず、経団連はいつもながらに組合の賃上げ要求をハネつける構えだ。それでいて物価は上がり、近い将来の消費税の引き上げが家計に重くのしかかってくる先々の暮らし向きに国民の不安は募るばかりだ。

だからこそ本欄は先週、麻生太郎副総理兼財務相の財政演説を受けて「その目指す雇用や所得拡大の中身を詰めた議論」(2月6日号)を求めたのだが、麻生財務相のこの日の答弁はこうだった。

「企業は今、巨大な内部留保を抱えていると思っております。幸いにして株価が上がり、輸出企業にとってはドルが高くなり、円が安くなったんで明らかに思わぬ利益が入った分が収益として増えている。その増えた分で従業員の給料を上げようと言われる会社もある。ただ、ここんところは、我々が強制してやらせることではありません。私どもは共産国家じゃありませんので」

相手が共産党だったこともあって、ブラックジョークでかわそうとしたのだろう。実際、笠井氏も含め委員、閣僚席に笑いを誘った答弁であった。

しかしながら、「円安株高が幸いして、企業が思わぬ利益をあげた」とは聞き捨てならない。

仮にそうだとすれば、賢明な経営者は「思わぬ利益」を従業員の給料にはまわさず、将来の「思わぬ不利益」のため内部留保するはず。聞きようによっては賃上げを渋る経団蓮を後押したとも取れる。

この直後、答弁に立った安倍晋三首相がさすがに「政権として麻生副総理の発言を撤回します。経営者の皆様には賃上げを要請するつもりです」と打ち消していたが、これもニヤニヤしながらのおふざけ半分。企業業績同様、内閣支持率も上り調子とのことだが、浮かれるのは労働者の賃金が上がってからにしてもらえないか。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】