麻生財政演説で蘇る小泉構造改革の悪夢とアベノミクスへの不安(藤本 順一)
国会は今週、総額13兆円超に上る今年度補正予算案について本格論戦をスタートさせた。4日には衆院本会議で麻生太郎副総理兼財務相の財政演説があり、補正予算案の提出理由を次のように述べた。
「昨年後半には、世界経済の減速なども背景に景気は弱い動きとなり、景気の底割れが懸念されていた」
麻生氏はまた、経済再生を最優先課題に掲げた安倍内閣の誕生で株価が回復したことを取り上げ「こうした改善の兆しを景気回復に確実につなげ国民の間に漂う閉塞感を払拭していなかなればならない」として補正予算の早期成立を訴えた。安倍内閣が先月閣議決定した緊急経済対策の第1弾との位置づけだ。
もとより景気回復への速効性が期待されるところだが、心配なのはそれが国民の雇用拡大と所得増にイコールで結びつくかどうかだ。
安倍内閣は先に決定した13年度税制改正大綱に雇用や給料を増やした企業の法人税軽減措置を盛り込んでいる。
これについて甘利明経済再生担当相は1日、ネット番組に出演した際、「(設備や人への)投資環境をつくるのがわれわれの仕事だ。業績が上がったら、それを社員や下請け企業に換言してくださいと要請しなければいけない」と述べているが、企業利益をどう配分するかはあくまで個別の経営判断次第であり、政府の要請を企業側がすんなり受け入れてくれる保証はどこにもない。
しかも安倍内閣が積極財政と同時併行で進めようとしている経済再生戦略は企業活動の規制緩和が軸となるからなおさらだ。もっと言えば、さらなる非正規社員の増加と所得の格差拡大をもたらすことになるかもしれない。
麻生氏は「長引く円高・デフレ不況から脱却し、雇用や所得を拡大させ、強い日本経済を取り戻す」とも述べていたが、同時に目指すべきは安定した雇用機会の確保と所得の公平分配ではないのか。
アベノミクスが小泉構造改革の過ちを繰り返すことがないよう、続く国会審議での論戦を期待する。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】