北朝鮮は水爆実験も行なうのか!?(辺 真一)
「高い水準の核実験」とは何か!
北朝鮮の3度目の核実験は時間の問題とされているが、北朝鮮は一体どのような核実験を行うのだろうか?
国防委員会の1月24日の声明では「高い水準の核実験」を行うと示唆していた。ならば、過去2回の実験とは異なる実験であることは明らかだ。
過去2回ともプルトニウムを使った実験だった。1945年8月9日に長崎に投下された爆弾と同じプルトニウム型爆弾である。
初の実験(2006年10月)では、長崎に投下された核爆弾に使用されたのと同じ量(6キログラム)のプルトニウムが使われたにもかかわらず、爆発規模はTNT火薬換算で1キロトンと、長崎の爆破規模(21キロトン)よりもはるかに小さかったことから「不発(失敗)に終わった」と言われていた。
しかし、核実験直後に訪朝(10 月31-11月4日)したヘッカー米国立核研究所名誉所長ら4人の研究者がまとめた報告書には「北朝鮮が実験2時間前に中国に通告したとおり当初4キロトンを目標にしていたなら、1キロトンの出力を得たことは、完全とは言えないが、成功的であったと言える」と結論付けていた。そのうえで、報告書は最後に「北朝鮮は核爆発を統制するため爆発規模を少なくしたようだ」と推測した。
ところが、2008年に北朝鮮から米国に提出された核計画申告書によると、実際に核実験に使われたプルトニウムの量はキロでなく実際にはその3分の1の2キロであった。北朝鮮の核開発は米国の予想を上回るものであったことが判明した。
さらに、3年後の2009年5月の二度目の実験では米中央情報局(CIA)など米情報機関を統括するブレア国家情報長官は「爆発規模は推定で数キロトン」(6月15日)とコメントしたが、ヘッカー名誉所長や米政策研究機関「全米科学者連盟(FAS)」の核専門家、ハンス・クリステンセン氏らは「4キロトン」と推定した。
これに対して北朝鮮と陸を接しているロシアや韓国は、爆発規模は最大で「長崎型原爆並み」との見解を示した。ロシア国防省報道官は「10~20キロトンの威力」との見解を表明し、韓国の李相喜国防相も「(爆発の威力は)1キロトンから最大20キロトンだったとみられる」と国会国防委員会で証言した。韓国の柳明恒外相にいたっては核実験の翌日(5月26日)に開かれた外交通産統一委員会で爆破規模について「長崎のそれよりも3~4倍も大きかったようだ」と語っていたが、2回目の正確な爆破規模は今もって不明だ。
北朝鮮はその後、米国の圧力と制裁が加えられる度に「核抑止力をより多角的に強化する」「各種核兵器を必要なだけ増やす」「新たに発展した方法で一層強化する」と外務省声明などで連呼していた。そして、これらの言葉が凝縮したものが、今回の「高い水準の核実験」のようだ。
「高い水準の核実験」がミサイルに搭載するための「小型化実験」が有力視されているが、一部で囁かれている濃縮ウラン型の核爆弾の実験ならば、1945年8月6日に広島に投下されたウラン型の核爆弾を北朝鮮は新たに手にすることになる。
北朝鮮は2009年6月に安保理制裁決議「1874」に対抗して、ウラン濃縮作業の着手に宣言し、早くも3か月後には国連安保理議長に宛てた手紙で「ウラン濃縮試験の成功」を主張している。
そして、1年後の2010年11月には遠心分離機を備えた近代的なウラン濃縮工場が稼動していたことが、訪朝したヘッカ氏ら米国の核問題専門家らによって確認されている。北朝鮮は数千基の遠心分離器を備えていると伝えたようだが、ウラン濃縮工場で2千個の遠心分離機を1年間フル稼働させれば原子爆弾1個製造するに必要な25~30キログラムの高濃縮ウランを手にすることができる。
高濃縮ウランで核爆弾をつくればプルトニウムより工程が簡単で費用と時間も節減できる利点がある。またプルトニウム爆弾に比べて軽量化が可能となる。
さらに、プルトニウム爆弾よりも製造と保管が簡単で、加えて複雑な起爆装置を使ってのプルトニウム方式と異なり単純な装置による爆発が可能である。
まさかとは思うが、ウラン型核爆弾の他に水素爆弾の実験の可能性も示唆されている。
4日の韓国夕刊紙・文化日報は韓国政府関係者の話として「水素爆弾の実験を行う可能性も排除できない」と伝えていた。
この政府関係者は「豊渓里(プンゲリ)核実験場の西側と南側の坑道で、 同時多発的に核実験をする可能性がある」とし「核分裂による爆弾だけでなく、核融合技術を使った水爆の実験を行う可能性も排除できない」と述べていた。
過去に水爆を実験した国は米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドなど6か国だが、米国は原爆から7年後、ロシアは6年後、英国は5年後、フランスは6年後、そして中国は1964年の初の原爆実験から3年後の67年に水爆実験を行っている。
北朝鮮は最初の原爆実験からすでに7年目を迎える。他の原爆実験国ができて北朝鮮にできないはずはない。
特にインドは、98年5月11日に3回、1日置いて、13日に2回同時に複数の実験を行ったが、11日の3回の実験の一つが水爆実験だったとされている。
北朝鮮は2010年5月に「核融合反応に成功した」と発表していることから核爆弾1発に必要なプルトニウムの量を節約し、爆弾の数を増やすこともできる。核融合反応を利用すれば、効率的な核分裂反応を起こすことができ、核爆弾の爆発力を飛躍的に高め、大幅な小型化も可能となる。
北朝鮮が果たしてどのような実験を行うのか?豊渓里実験場で少なくとも2か所の坑道で活発な動きがあるところをみると、複数の実験の可能性も否定できない。時間を要しているのは、もしかすると、複数爆弾の実験のためかも?
【ブログ「ぴょんの秘話」&NLオリジナル】