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安倍「国防軍」と「愛国教育」の短絡思考(藤本順一)

 第183通常国会が28日、幕を開けた。安倍晋三首相は政権発足後初となる所信表明演説で日本経済、震災復興、教育、安全保障について「危機を突破せんとする国家の確たる意志を示すため、与野党の叡智を結集させ、国力を最大限に発揮させようではありませんか」と各党各会派に呼びかけた。

 確かに「危機」には違いないが、演説中に「危機」の言葉が14回も出てくるのは少々煽りすぎではないのか。国民を不安に陥れて、首相のリーダーシップに期待感を高めようとの魂胆であろうが、演出過剰である。

 とりわけ心配なのは、安全保障と教育である。演説の冒頭、安倍首相はアルジェリアのテロ事件について「世界の最前線で活躍する、何の罪もない日本人が犠牲になったことは痛恨の極みです」と哀悼の意を表した。

 犠牲者を「企業戦士」と呼ばなかったことは、本欄の指摘を受けてのことだろう。加えて言えば、テロとの戦い=自衛隊の派兵といった短絡的な発想も改めるべきだ。

 同様、今回の演説にはなかったが、安倍首相が意欲を見せている国防軍構想についても慎重であってもらいたい。
確かに現憲法下、自衛隊の存在は矛盾に満ちたものかもしれない。だが、これを国防軍とした途端、日本政府は兵員確保に頭を悩ますことになるはずだ。

 第一に少子高齢化に加え、大学全入時代の日本である。戦後の豊かさをそこそこに享受してきた若者が、防大出の士官、将校候補ならいざしらず、銃剣抱えて前線に立つわけがない。

 米軍や中国人民解放軍、英国や仏軍もそうだが、志願兵の多くは移民や少数民族の貧しい家の出だ。戦前の日本もそうだった。高度経済成長期、自衛隊ですら隊員確保に苦労し、街角で若者を見れば誰彼構わず声を掛けては入隊を勧誘していたではないか。さらには厳しく軍律を課せられ、犯せば軍法会議となれば現役の自衛隊員も逃げ出してしまうに違いない。
ことほど左様、噴飯モノの国防軍だが、これを憲法に規定するとなれば、徴兵制の導入も視野に入る。安倍首相が教育の危機を叫び、愛国教育に熱心なのも肯けよう

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】