自衛隊には荷が重い!アルジェリアのテロ人質事件と「カスバの女」(藤本順一)
犠牲者の数は未だはっきりしない。日本人10人の安否が以前不明とのこと、痛ましい事件だ。
不謹慎とのお叱りを受けそうだが、第一報に接して頭に浮かんだのは昭和歌謡「カスバの女」の一節だった。
「ここは地の果てアルジェリア・・・明日はチェニスかモロッコか・・・外人部隊の白い服」
日本人からすれば、まさに最果ての地で起きた惨劇である。いったい現地で何が起き、起ころうとしているのかさっぱり分からない。
「私が陣頭指揮を執り、政府一丸となって全力で事件に対処していく」
安倍晋三首相は19日に開催した「在アルジェリア邦人高速事件対策本部」後の記者会見でこう述べていたが、事件発生当初から日本政府の打つ手は限られていた。
事件を機に小野寺防衛相は20日のテレビ番組でアフリカでの情報収集活動を強化するため現地駐在武官の増員に意欲を示していた。聞けば現状、エジプトとスーダンに各1人、武官が駐在しているそうだ。多いにこしたことはないが、サハラ砂漠に水をまくような話である。
また、自民、公明両党は21日、在外邦人の保護・救出態勢を強化するための自衛隊法改正に向けて動き出した。
具体的には現行、自衛隊法84条が邦人救出の輸送手段として航空機と船舶に限定しているものに陸上車両を加え、さらに自民党は邦人救出のための武器使用の要件緩和にまで踏み込む構えだ。つまりは、人質犯とも一戦交えるつもりらしい。
議論するのは結構なことだが、いかに邦人救出・保護が目的であっても自衛隊の海外派兵にかかわることであれば拙速は避けるべきだ。
もちろん現行憲法の制約もあるが、現実問題、自衛隊が現地に到着するまでには事件のケリはついていよう。首尾よく間に合ったとしても地理不案内な自衛隊に人質救出は荷が重い。志願を募っても引き受け手がいなければ画に描いた餅になりかねない。いざという時に役に立ってこその危機管理である。現地で外人部隊を雇った方がまだマシだ。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」1月21日入稿原稿)より】