新キングメーカー麻生太郎のしたたかさ(藤本順一)
第2次安倍内閣が26日、発足した。名付ければ「安倍・麻生名誉回復連立内閣」といったところか。周知のとおり、安倍晋三首相は前回、首相として臨んだ参院選に敗れて衆参ねじれの国会運営に行き詰まり政権を放り出した。麻生太郎副総理兼財務・金融相は08年、党勢回復を期待されての首相登板だったが、リーマンショックの対応を追われて解散のタイミングを逃し、翌年の衆院選で民主党に政権を奪われてしまった。共に在任期間は1年足らずで政権転落を招いた「A級戦犯」と罵られ、蔑まされての無念さは推して知るべし。安倍・麻生両氏にとっては失敗が許されない再登板となる。今度こそとの思いが、内閣・党役員人事からも伝わってこよう。
何より象徴的なのは首相官邸に副総理執務室が設置されたことだ。本欄が独自に入手した情報だが、本来ならば麻生氏は財務省の大臣室に陣取るところ、各省庁から首相並みの副総理秘書官を付ける破格の待遇だ。ある意味、安倍首相が国家権力を麻生副総理と分け合う、言い換えれば責任を分かち合う「連立内閣」たる所以である。
それさえ押さえていれば、今回の内閣・党役員人事は実に解りやすい構図だ。
首相官邸は安倍首相の名代として麻生副総理が束ね、政府スポークスマンの菅義偉官房長官が党、国会との連絡調整を担うことになるが、これまで官房長官が担ってきた各省庁との政策調整については内閣府に新設の「日本経済再生本部」と復活した「経済財政諮問会議」、民自公3党合意で設置された「社会保障制度改革国民会議」を束ねる甘利明経済再生相兼経済財政、一体改革担当相に委ねられた。
また、政府にもたらされる情報はいったい麻生副総理に集約され一元化され、安倍首相の指示、判断を仰ぐことになる。「お友達内閣」と揶揄され、官邸機能が混乱した過去の反省を踏まえてのものだ。
ちなみに官房長官の役割を分割したのも、甘利経済再生担当相が望んでいた利権官庁の経済産業相との兼務にダメ出して内閣府に押し込めたのもこの2人の増長を警戒した麻生副総理の判断だった。
同様に党役員人事についても高村正彦副総裁を留任させ、大物の細田博之前総務会長を幹事長代行に起用したのは麻生副総理の意向による。衆院選の大勝で留任した石破茂幹事長の動きを封じ込めるためだ。
さらに麻生総理は政敵の古賀誠、山崎拓両元幹事長の政界引退を機に派閥再編を目論む。古賀氏の子飼いだった岸田文雄外相、林芳正農水相や谷垣禎一法務相を閣内に取り込んだのは宮沢派後継争いで分裂した「宏池会」の再結集への布石である。
「これでは安倍じゃなくて麻生政権だよ」
早くも永田町からこんな声が漏れ伝わってくるのも無理からぬことだ。その意味で第2次安倍内閣の発足は、麻生副総理のキングメーカーとしてのデビュー戦でもあった。なかなかしたたかな人事である。深読みが過ぎるか。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」12月26日入稿原稿)より】