第2次安倍内閣の顔ぶれと長期安定政権へのハードル(藤本順一)
大方の予想通り、自民党は「大勝」した。大手紙のように「圧勝」と書けないのは、安倍政権への期待と不安が入り乱れてのことだ。
期待の方は何より景気対策、被災地復興のスピードのようアップは国民有権者が望むところだ。自民党の政権復帰を金融市場も期待を込めた円安、株高の祝砲で迎えている。
周知のとおり、自民党は選挙公約でインフレ誘導と国土強靱化の公共事業を合わせて名目3%の成長を約束した。さっそく、その実効性が問われよう。
急がれるのは師走の政変劇で懸念される景気の底割れ対策だ。これについて安倍晋三総裁は17日の記者会見で「デフレギャップを埋めることも念頭に置きながら、(2013年度予算の)暫定期間を充分にカバーするものでないといけない」と述べ、年明け通常国会早々にも大規模な補正予算を編成する意向を示した。
ネックになるのは財源問題だ。安倍総裁は盟友で財政出動に積極的な麻生太郎元首相を副総理兼財務相に起用するそうだから、その分、社会保障費の大幅カットが心配でもある。
ただ、そうは言っても国民有権者が自民党に294議席、公明党を併せて衆院の3分の2超の議席を与えてしまった以上、今さら後戻りはできない。
原発についてはどうか。自民党のエネルギー政策は原発維持が基本である。新設はともかく、停止中の原発については安全が確認できたとして再稼働を容認するのは火を見るより明らかだ。東電の国有化や電力供給の発送電分離にも後ろ向きである。
国会で議論を尽くしてもらいたいが、如何せん多勢に無勢、開き直られたら為す術はない。それにタカ派的野心を剥き出しにする安倍総裁の暴走も心配だ。
今回、衆院選の投票率は小選挙区が59・32%、比例区が59・31%だった。いずれも戦後最低である。民主党政権が誕生した前回、09年よりいずれも10%弱下回っている。また、比例区の得票率は27・62%で大敗した前回と同水準だった。有権者の不安を裏付ける結果であり、「圧勝」と呼ぶには程遠い内容である。
もとより自民党政権の誕生を否定するものではない。26日には自公連立政権がスタートする。長期に安定した政権は国民が望むところだ。だからこそ首相となる安倍総裁には一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んで欲しいと思うのだが。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」12月17日入稿原稿)より】