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争点が分かりやすかった韓国大統領選(辺 真一)

日本の総選挙の次は、19日に投票日を迎える韓国の大統領選挙だ。

どの政党、どの候補に投票したらよいか迷うぐらい政党が乱立した日本の選挙とは違い、韓国は米大統領選挙同様に与野党候補による一騎打ちだ。それも、経歴から政策のどれ一つ見ても、好対照の政治家同士の戦いである。有権者にとっては実に選択しやすい二者択一の選挙となっている。

与党・セヌリ党の朴槿恵候補(60歳)は故朴正煕元大統領の娘、方や野党・民主統合党の文在寅候補(59歳)は故盧武鉉前大統領の秘書室長を勤めた。皮肉なことに文候補は、朴正煕政権時代に盧武鉉前大統領ともども反体制運動で投獄された経験を持っている。

お嬢様育ちの朴候補(60歳)は父親の死去から20年後の1998年、46歳で政界入りした当選4回のベテラン議員である。野党時代の2004年にはハンナラ党の党首に就任。女性の党首としては39年ぶりの「快挙」であった。苦戦を伝えられていた今年4月の総選挙を陣頭で指揮し、善戦したことで与党では「セヌリ党のジャンヌ・ダルク」と称されるほどでまさに「とっておきの勝てる候補」である。

これに対して一つ年下の文候補は、市民活動家、庶民弁護士出身で、39歳の時に開設した法律事務所のパートナーである盧武鉉氏が2002年に大統領選に出馬した際に釜山選挙対策本部長を買って出たことでそのまま政治の政界に足を踏み入れた。今年4月の総選挙で初当選した文候補は言わば、新人議員ではあるが、無党派から圧倒的な支持を受けていた無所属の安哲秀候補との一本化を果たしての出馬だけに野党統一候補としても絶対に負けられない選挙である。

また、今回は、これまでの慶尚道VS全羅道、慶尚道VS忠清道という地域対立とは異なり、二人とも同じ慶尚道出身である。それでも、慶尚道を北道(大邸)と南道(釜山)に二分した戦いとなっているのも興味津々だ。

さらには、韓国大統領選挙史上初の男女の対決でもある。朴候補が勝てば、史上初の女性大統領の誕生となる。朴候補が「雌鶏泣くと国滅びる」との女性蔑視の儒教的なタブーを打ち破ることができるか注目されている。

大統領選挙の当落予想だが、当初大統領選挙には二人の他に無所属の安哲秀候補と革新系野党の統合進歩党の李正姫候補の4人が立候補したことで与党の朴候補が断然有利だったが、文候補と安候補の一本化によって、その差が急接近し、先週までの各種世論調査では、朴候補と文候補の支持率は誤差範囲の2%前後にまで縮まった。さらに、16日には泡沫候補とは言え、1%の支持率があるもう一人の李正姫候補も立候補を取りやめ、事実上文候補への支持に回ったことでその差はほとんどないのが現状である。

勝敗の行方は、12日の北朝鮮の衛星と称されるミサイル発射による「北風」と、16日の「安部自民党圧勝」という日本からの「東風」が与野党どちらの候補に追い風、あるいは逆風となるかによって変わってくる。

「北風」については、朴陣営では、「朝鮮半島の緊張激化を憂慮する世論が高まれば、対北融和派の文候補への追い風になる」と警戒しているが、逆に文陣営では「今回の発射で、北脅威論が叫ばれ、安保意識が高まれば、安全保障を重視する朴候補を利することになる」と、「北風」は文候補にとって逆風となっていると分析している。

また、日本の総選挙結果による「東風」については朴陣営では「安部右翼政権の誕生は、野党陣営から父親が親日派と攻撃されている朴候補にとっては不利で、対日強硬派の文候補への追い風となりかねない」とみており、一方の文陣営では「タカ派的な安部政権の誕生によって日韓関係を憂慮する世論の声が高まれば、対日穏健派の朴候補が有利になる」とこれまた「北風」と同様の受け止め方をしている。

どちらが、勝つか、開票してみなければわからないほど予想が付きにくいが、安哲秀候補が出馬を取りやめたことで熱の冷めた20~30代の若者が投票所に行き、投票率が70%台を超せば、文候補が逆転勝利するかもしれない。

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