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【速報】IAEAと福島県立医科大との実施取決め(おしどりマコ)

2012年12月15日、福島県郡山市ビックパレットにて開催されている原子力安全に関する福島閣僚会議で、IAEAと福島県が協力していくための覚書の署名式が行われた。

【速報】IAEA天野事務局長と佐藤雄平福島県知事との覚書(http://op-ed.jp/archives/5749

この記事中に出てくる「人の健康の分野における協力に関する福島県立医科大学と国際原子力機関との間の実施取り決め」について掘り下げたい。

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知的財産とは何か、何のための取決めか

14のパラグラフからなるこの取り決めの、パラグラフ9に筆者は最も引っかかった。「知的財産」という項目である。

9 知的財産
両当事者はIAEA憲章上の任務(特に、IAEA加盟国間の情報の交換の促進)を尊重しつつ、適当な場合かつ必要に応じ、知的財産および知的財産権に関連する事項(パラグラフ5で言及されている別途の合意の必要性を含む)について相互に協議する。

いったい、「人の健康の分野」における「知的財産」とはどのようなものであろうか。健康に関する情報、研究、発明、検査法、特許。そのような知的財産について言及する取り決めには原発事故があり、汚染地域で生活する方々のために、全力で協力するという姿勢を筆者は読み取ることができなかった。

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健康に関する情報は公開されるのか、誰のためのものか 

パラグラフ8も非常に気になる。

8 情報の普及
両当事者は、財産的性質を有する情報の保護を条件として、本実施取決め及び、適当な場合かつ必要に応じ、その後の別途の取決め(パラグラフ5で言及されている合意を含む)の下で提供されまたは交換される公開の情報の可能な限り広範な普及を支援する。両当事者は、他方の当事者によって秘密として指定された情報の秘密性を確保する。 

IAEAは健康に関する分野で福島県立医科大に協力する取決めの中で「可能な限り」情報の普及を支援するが、「他方の当事者によって秘密として指定された情報の秘密性を確保する」というのである。

筆者は、県立医科大学が行っている、小児の血液検査の結果の公開を昨年から求め、県民健康管理調査検討委員会 で何度もその結果を質問したが、県立医科大学の担当者からは「結果をとりまとめていない」の回答のみである。

血液検査の現状報告(http://op-ed.jp/archives/5084)。この記事中にその件をまとめている。

今年7月に血液検査の結果を求め情報開示請求をしたが県立医科大学からの回答は「不開示」であった。

http://op-ed.jp/archives/5084/6

ちなみに第9回検討委員会では15歳以下の小児がすでに2万2699人健康診査を受けている。「白血病発症リスク増大のため」白血球分画を上乗せした血液検査を含む健康診査である。

http://op-ed.jp/archives/5084/4

血液検査の結果は、40歳以上のものの一部しか公表されていない。このような状態の中で、情報の秘密性を確保された取決めがなされたことは残念でならない。

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IAEAの特権と主導権

パラグラフ8と9に出てくる「パラグラフ5の別途の合意の必要性」というものは、法的又は財政的な義務が生じる活動は、別途の合意の必要性について相互に協議する、というものである。

「当該活動は、IAEAの財務規則に従って別途の合意が作成される前には実行できないことが確認される」県立医科大とIAEAとの協力の取決め、と言いながら、IAEAに主導権があるのだろうか?

その懸念はパラグラフ10で大きくなる。

10 特権 及び免除
両当事者は、日本国政府が1963年4月18日にIAEAの特権及び免除に関する協定を受諾したことに留意する。 

IAEAの特権及び免除に関する協定Agreement of the Privileges and Immunities of IAEA.http://www.iaea.org/Publications/Documents/Infcircs/Others/inf9r2.shtml

これを調べてみると驚くほど特権が与えられていることに気づいた。主な内容は、

*IAEAに法人格を与える(第2条)。
*財産等に関する訴訟、捜索、税等の免除(第3条)。
*機関職員及び機関の任務を行う専門家に対する外交特権付与(第6条、第7条)。

IAEAは原発事故で汚染された方々の健康への知見の提供のため、県立医科大と協力関係を結ぶのではないのか。なぜこのような特権が与えられ、取決めの中でそれを強調するのか。

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果たしてIAEAは被曝による健康被害に関して公平な判断をするのか

12月9日に行われた地元説明会の中で、住民が外務省に対して、1959年に結ばれたIAEAとWHOの協定を持ち出し詰め寄る場面があった。

http://op-ed.jp/archives/5749

この1959年のIAEA-WHO協定について訳しているものはこちらである。
http://www.crms-jpn.com/doc/IAEA-WHO1959.pdf

これをみると、WHOとIAEAはとても緊密な関係にあることが伺える。とくに「統計業務」の章には疑問だ。「統計分野における情報、資源…共通の関心事項を行う全ての統計計画について、相互に協議しあうものとする」

このように、WHOは原子力推進機関であるIAEAを協議しながら、被曝の健康被害についてきちんと評価できるものであろうか? IAEAは「原子力の平和的利用の促進」と「核兵器への転用の防止」が目的の機関である。この1959年協定をもって、WHOは放射能汚染の犠牲者を守るという使命を果たしていないと批判し続けている団体もある。

http://independentwho.org/jp/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%80%8Cindependentwho%E3%80%8D/
http://independentwho.org/jp/who%E3%81%A8iaea%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%AE%9A/

特権と主導権を与えられ、IAEAは福島の地において、何を「協力」していくのだろうか。この取決めは3年間有効で、お互いの同意によって延長することができるという。

次の記事に、人の健康に関する分野における協力に関する実施取決めの仮訳の全文を掲載する。

http://op-ed.jp/archives/5784

【NLオリジナル】