金正恩第一書記、軍事クーデターを警戒!?(相馬 勝)
金正恩氏、官邸など専用施設30個所に戦車や装甲車100台を配備
軍や民衆の不満爆発を懸念、ミサイル発射、金正日総書記追悼などで国民に負担
北朝鮮の金正恩第一書記が、官邸や別荘などの専用施設三十カ所以上に戦車や装甲車など百台以上を配備するよう指示したほか、金氏の特別列車専用駅周辺の警備を大幅に強化していることが報じられた。
これについて、北京の外交筋は、金氏が最近、軍最高幹部を次々と失脚させたことや経済不振で軍や国民の不満が高まっており、軍事クーデターや民衆暴動を極度に警戒しているためだと説明している。
金氏の父親の金正日総書記も晩年、官邸などの警備強化を指示したこともあったが、これは米軍のステルス戦闘機の攻撃などを警戒したためで、官邸や視察先の別荘など二、三カ所に限られていた。
ところが、金第一書記時代に入り、昨年十二月の金総書記の葬儀で霊柩車に随伴した軍最高幹部四人がそろって失脚するか閑職に回された例に象徴されるように、七〇、八〇代が中心の軍団長級幹部の三〇%以上が引退し、その代わりに金第一書記に忠誠を誓う四〇代から五〇代の幹部が大幅に登用されている。
同筋は「金氏が自身の権力基盤を強化するため、粛清人事を断行したことで、軍を中心に北朝鮮内部で動揺が生じている」と指摘する。
軍以外でも、慢性的な経済不振に苦しむ国民の金第一書記に対する不信感は根強い。金総書記の神格化に伴う銅像建設などの費用は計一億一千万ドル(約九十億円)以上で、これは朝鮮労働党・政府幹部のほか、地方の末端幹部の給料から上納金としてピンハネされているおり、ただでさえ苦しい庶民の生活がなお困窮している状態だ。さらに、韓国政府の見積もりでは、実質的なミサイル発射実験の予算は約四億八千万ドル(約四百億円)だけに、北朝鮮国内では金政権に対する不満が渦巻いているといえよう。
金第一書記は国内の不穏な空気を感じ取り、このほど「私の警護を保障する事業に最大の注意を払え」とする「一号行事(金氏の参加行事)秘密厳守の指示」を通知、金氏周辺には常に自動小銃や手りゅう弾などで重武装した兵士が配備に付くようになった。
「金正恩氏は独自色を出そうとして焦るあまり、逆に軍や庶民から強い反感を買っているようだ。このまま経済状態が好転しなければ、金一族に不満の矛先が向かうことも考えられる」と同筋は指摘する。
【NLオリジナル】