「維新」橋下徹・「未来」嘉田由紀子に一発逆転の秘策あり(藤本順一)
第3極の混乱が心配だ。未来は衆院比例区の候補者名簿の順位付けをめぐり嘉田由紀子代表側近と生活合流組の主導権争いが表明化してしまった。年間31万2000円の子育て支援の選挙公約は生活が持ち込んだようだが、これも余計な付け足しだった。
「子供手当は民主党が失敗したやつだ。5兆円(の財源)がいる。国はとにかくお金がない」と維新の橋下徹代表代行に批判されて反論できないでいる。「卒原発」に期待した有権者もシラケよう。
もっとも維新も未来を批判できる立場ではない。
石原―橋下コンビを「二股の大蛇にしか見えない。原発やエネルギー政策など、どっちを向いているのか分からず、将来を委ねられない」とは野田佳彦首相の街頭演説である。公示直前になって最低賃金制度廃止の選挙公約を撤回したことも浅慮が過ぎよう。
野田首相は「橋下氏がもともと持っていた非常に切れ味鋭い路線が見えなくなっている」とも述べていたが、同感だ。
両党共に己の立場をわきまえることだ。強固な支持基盤を持つ民主、自民の2大政党を相手に四つ相撲を取るつもりなら軽く捻られてお終いだ。かつて土俵を湧かした舞の海ではないが、小兵は小兵なりの戦い方があろう。今からでも遅くはない。未来は「卒原発」、維新は「地方分権」一本で勝負することだ。初志、初心を忘れてしまったら烏合の衆でしかない。
残念ながら第3極政党は小選挙区300のうち47選挙区で維新と未来が、11選挙区で未来とみんなが、16選挙区で維新とみんなが競合する。比例票も含めて無党派2000万票の奪い合い、つぶし合いの選挙戦になりそうだ。このままでは有権者の貴重な一票が議席に結びつかない死票累々である。当然ながら民主、自民の2大政党が漁夫の利を得ることにもなろう。首相の座がちらつく自民党の安倍晋三総裁の高笑いが聞こえてくるようだ。
安倍総裁のタカ派的体質については本欄で度々問題点を指摘してきたところである。とりわけ、偏狭な愛国心を国民に強要し、これを義務付けようとする憲法観は危険極まりない。
周知のとおり、現行憲法は国民の権利を最大限に担保し、為政者の暴走に歯止めを掛けている。時代の変化に対応して修正、加筆することは否定しないが、国民の義務と権利を逆転させるような安倍的な改憲には反対だ。
自民党の政権復帰は望むところだが、大勝ちすればきっと安倍総裁は暴走するだろう。5日から期日前投票が始まった。有権者のバランス感覚を期待したい。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」12月5日入稿原稿)より】