北朝鮮のミサイル発射Xデーは12月12日か?(辺 真一)
やはり、北朝鮮だった。
北朝鮮は、李建國全人代常務委員会副委員長が率いる中国共産党訪朝団が帰国した翌日(1日)、衛星(長距離ミサイル)を10日から22日の間に打ち上げると発表した。中国がどこまで本気で説得したのか、定かではないが、いずれにせよ北朝鮮が発射を思い留まることはなかった。
北朝鮮は中国が何を言おうが、習近平総書記の親書であれ、この件では聞く耳は持たないだろうと思っていたが、案の定だった。
金正恩第一書記との会談は平壌到着後の翌日に実現し、7月に訪朝した王家瑞党対外連絡部長の時と同様に晩餐会も開かれたものの、今回は、労働党中央委員会主催であって、金第一書記主催による晩餐会ではなかった。
従って、晩餐会には金正恩氏自身も、側近の軍No.1の崔龍海軍総政治総局長、後見人の叔父の張成沢国防副委員長も、対米外交責任者の姜錫柱副総理ら実力者の面々は前回と異なり姿を現さなかった。
李建國全人代常務委員会副委員長は政治局員で、王家瑞党対外連絡部長よりも格上である。まして、今回の訪朝団には王家瑞党対外連絡部長も加わっている。それなのにこの扱いだ。衛星発射を止めに来たので、こうした対応をせざるを得なかったのか、定かではない。
中国も自らの限界を知っていて、半ば諦めているようでもある。国境を接しているインド、ベトナムとの関係がぎくしゃくし、加えて、友好国のミャンマも米国に接近し、中国離れしようしている時に伝統的親中国である北朝鮮との関係悪化は避けなければならない。それが中国の戦略的国益でもある。
まして、北朝鮮のミサイル開発と配備は、中国が東シナ海や尖閣諸島で対峙している米国、日本に向けられており、北朝鮮と「同盟関係」にある中国にとっては脅威ではない。仮に北朝鮮を中国の一省扱いしているなら、地政学的にも軍事的にも北朝鮮のミサイルは中国にとって日米の脅威に対する楯、あるいは前進基地にもなっている。日米の安全保障ために中国が貧乏くじを引く必要がないというのが中国首脳部の考えなのかもしれない。
中国外交部スポークスマンは2日、北朝鮮に対して自制を促すコメントを発表していたが、いつものパターンだ。国際社会へのエクスキューズというほかない。
今年7月に訪中した韓国予備役将軍代表団との会談の席で中国の梁光烈国防長官は「中国は今後、北朝鮮のいかなる挑発も容認しない」と言明していたが、これまた、韓国、国際社会に向けての中国得意の「二枚舌」なのだろう。
中国が本気で怒っているなら、北朝鮮の発射は、国連安保理決議「1718」(2006年)と「1874」(2009年)、さらには今年4月16日の安保理議長声明に反するわけだから、議長声明に盛り込まれた「北朝鮮による更なる発射にはこれに応じて行動をとる決意」を行動で示さなければならない。
北朝鮮の発表では、打ち上げは10日から22日の間。2009年の時は4~8日、今年4月の時は12~16日といずれも「5日間」の期間を設けていた。今回は過去に比べて猶予期間が一週間長くなっている。気候の関係だろう。
北朝鮮は1998年の発射以来、過去4度テポドンと衛星を発射しているが、4月が2回、7月、8月がそれぞれ一回といずれも春と夏にかけて行われている。冬は今回が初めてのケースだ。
北朝鮮の気象をみると、12月の平均気候は曇りの日が多く、降雪もある。気温も零下5~10度まで下がる。春、夏に比べて条件的には良くない。それでも、今回の発射は、17日の金正日死去一周忌行事に向けた「目玉」であるだけに決行せざるを得ない。
今回は、絶対に失敗が許されない。過去2回は、いずれも予告開始の二日目に発射している。そして打ち上げは、いずれも失敗に終わっている。
従って、気候、天気さえ良ければ、予告日開始の10日でも発射はあり得るが、ずばり「Xデー」は予告三日目の「12日」とみる。この日が、ミサイルやロケットを製造する「軍需工業の日」であるからだ。
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