米国務省が懸念する「尖閣諸島で日中衝突の可能性」(相馬 勝)
尖閣諸島をめぐって日中間の偶発的な紛争発生を懸念、米国務省がオバマ大統領に報告 中国次期首相が「軍事的手段による奪還」否定せず
沖縄県・尖閣諸島の国有化をめぐって、中国はほぼ連日、海洋監視船による日本領海への侵入を繰り返しているが、ワシントンの米国務省関係者によると、同省は「今後、日中両国の対応が激化し、偶発的な衝突が起こり紛争化する可能性がある」などとの報告をオバマ大統領に提出しているという。
報告書は、中国の次期首相候補である李克強・副首相が最近、米政府の元高官と会見した際、「中国指導部は領土問題では絶対に譲歩しない。すでに、中国人民解放軍は釣魚島(尖閣諸島の中国名)奪還に向けて、軍事的準備を整えつつある」と明言し、軍事力行使をほのめかしたことに強い懸念を表明している。
[caption id="attachment_5339" align="alignnone" width="620"] 福建省沿海にある中国空軍の秘密基地。尖閣諸島に12分で到達できる(写真はgoogle earthより)[/caption]
報告書を作成したのはアーミテージ元国務長官やハドリー元国家安全保障担当大統領補佐官、ジョセフ・ナイ元国防次官補と、オバマ政権で国務副長官を務めたジェームズ・スタインバーグ氏。いずれも安全保障問題に精通した元米政府高官だ。
すでに報じられているが、アーミテージ氏らは10月下旬、東京で野田佳彦首相と玄馬光一郎外相と会見。その後、北京で、李副首相や楊潔◆(◆は竹カンムリに褫のつくり=ようけっち)外相と会い、それぞれ尖閣問題の対応を協議したという。
報告書は「両国の指導者が尖閣問題について一切話し合おうとせず、深刻な意見の対立を生み出していることは驚くべきことだ。両国の艦船が尖閣諸島周辺で監視活動を続けており、偶発的な衝突を起こし、軍事紛争に発展することもありうる」と懸念を表明。さらに、「そうなれば、米国が紛争に巻き込まれる可能性が高く、東アジアの安全保障が脅かされるばかりでなく、南シナ海における中国と周辺諸国の領土・領海問題に飛び火することも覚悟しなければならない」と指摘している。
[caption id="attachment_5340" align="alignnone" width="620"] 空軍基地は東シナ海に面している(写真はgoogle earthより)[/caption]
前出の関係者によると、報告書を受けとったクリントン国務長官はこのほど、四人の元高官と会い、尖閣問題について協議した結果、報告書をオバマ大統領に提出することを決めたという。
「クリントン長官は米国の安全保障上の利益が損なわれかねないと懸念したのだろう。オバマ大統領を通じて両国の対話を促進させたいところだが、日本が貧乏くじを引くことも考えられるだけに、日本政府は慎重な対応が求められよう」とこの関係者は指摘する。
【NLオリジナル】