ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

介護と仕事を両立するための支援はまだまだ行き届いていない(町 亞聖)

BSTBS「在宅介護」の最後の取材で静岡に行ってきました。

取材させていただいたのは、突然、原因不明の心配停止を起こし、命は取り留めましたが低酸素脳症となり、遷延性意識障害の状態になった奥様を在宅で介護する男性です。

奥様が倒れた時はまだ30代。介護保険の対象年齢ではないため、訪問看護に関するサービスをご主人は自分で全て手配しなければならなかったそうです。

ヘルパー、訪問看護、リハビリなどを受けながら介護をしているご主人はこう話してくれました。「私は諦めていません。医療が進歩し妻の治療ができる日が来ると信じています。その日のために出来ることは全てやって良い状態を保ってあげたい」

ご主人は奥様の介護のために転職もされているそうです。介護と仕事を両立するための支援は本当に行き届いていません。

また静岡では、医療的ケアがあるとデイサービスやショートステイで受け入れてもらえないそうです。介護している人の負担を少しでも軽減するために、一日でも半日でもいいから受け入れてもらえるようにして欲しいと訴えていました。

いつまで続くか分からない不安……。重い障害がある家族を在宅で看るのは大変なことです。そんな中、ブログに寄せられるコメントも励みになっているそうです。介護の記録を綴っているご主人のブログですhttp://s.webry.info/sp/toshiake.at.webry.info/201203/article_1.html

精神的、肉体的、そして経済的負担が少しでも軽くなるよう伝えなければならないことはまだまだ沢山あります。

広島、山口、横浜、静岡と抱える病気や家族構成住む町や介護環境など、それぞれ違いはありますが、介護や医療のサポートを受けながら在宅介護をしている皆さんが取材に協力してくださいました。葛藤、不安、迷いなど様々な思いを抱えながらも今を受け止め前向きに生きていらっしゃいました。

ご主人が脳梗塞の後遺症で車椅子の生活をしている山口のご家族を二回目に訪問した時、ちょうど一番上のお兄ちゃんが高校受験を終えたばかり。受験の問題に「バリアフリー」を説明する問題が出題されたそうです。「この人(お父さん)のおかげで答えられた」と少し照れながら、でも少し自慢するように話してくれました。

実はお兄ちゃんは、訪問診療をしている先生に「リハビリの先生になりたい」と打ち明けたそうです。父親の病気や障害をきちんと受け止め、学び成長しているお兄ちゃんの姿に自分の弟と妹が重なりました。

母がくも膜下出血で倒れた時、弟は山口のお兄ちゃんと同じ中学3年、妹は小学6年でした。弟は消防士をへて救急隊に、妹は二児の母になりました。

悲しくて泣いていても母は元の状態には戻らない。ならば現実を受け入れ、障害があっても母に幸せだと思ってもらえるように皆で一生懸命生きよう。そう思いました。与えられた運命から教えられることは沢山あり、悩んだ日々は無駄ではありませんでした。

今回の取材でも患者さんと家族、そして支える先生達との良い出逢いがありました。多くの尊い出逢いを与えてくれている母に感謝です。大変な中、協力していただいた皆さん、本当にありがとうございました。

【ブログ「As I am」(2012年3月11日)」より】