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日朝協議でわかった!北朝鮮・日朝国交正常化の本気度(辺 真一)

日朝協議、何が進展?

日朝政府間(局長)協議が終了した。予想した通り、北朝鮮は拉致問題の話し合いにも応じてきた。

北朝鮮が「拉致は解決済み」と言わず、素直に拉致問題に関する協議に応じたことを日本は「進展」「前進」と評価しているが、実におかしなことだ。

北朝鮮は安部政権下での2007年9月の交渉でも「拉致は解決済み」とは言わなかった。当時、美根慶樹日朝国交正常化交渉担当大使は「宋日昊大使は「『拉致は解決済み』との言葉は使っていなかった」と記者会見で語っていた。

町村信孝外相(当時)も「北朝鮮は(協議では)『拉致は解決済み』との言葉は使っていない」と指摘し、「拉致を含む懸案事項について、今後真剣に協議して、実行していくと言っているので、まさに今後の協議に委ねられた」と一定の評価をしたほどだ。

また、福田政権下での2008年8月の交渉では拉致問題に関する協議に応じるどころか、北朝鮮は一歩も、二歩も踏み込んで、安否不明者の再調査の約束までしていた。

さらに、自民党から民主党に政権交代した2010年の鳩山政権下においても宋日昊大使は共同通信とのインタビューで(4月17日)で「(朝鮮高校が)無償化されれば、政権が代わって新しくなったと受け止め、こちらとしてもやるべきことをやる」と制裁緩和を条件に再調査の意向を表明していた。

従って、今回の協議で北朝鮮が「拉致は解決済」と言わなかったことがあたかも「進展」「成果」であるかのように伝えられているのはどう考えても理解に苦しむ。

おそらく、今回の協議は、双方の共通の関心事を建設的に話し合い、意思の疎通が図られたことと、次に繋げることで合意したことが「成果」なのだろう。福田政権下での安否不明者再調査の合意が再確認されれば大きな成果となったが、それまでには後、2~3回ぐらいは交渉を重ね、信頼関係を構築しなければならないのかもしれない。

今後の見通しだが、北朝鮮が直前に野田総理が国会を解散したのに協議をドタキャンしなかったこと、マスコミに協議の冒頭を公開し、拉致問題についても真摯に話し合ったこと、さらに、仮に政権が交代しても、北朝鮮が協議を続けることに同意したことで、それなりに期待が持てる。

特に、課長級協議に拘っていた北朝鮮が局長級協議に応じ、加えて素直に拉致問題についての話し合いに応じたのは、野田政権から事前に何らかの担保を取り付けていた可能性も考えられなくない。消息筋によると、野田総理は11月初旬に首相官邸に杉山アジア太平洋局長を呼び、日朝交渉を進めるよう訓示したほど、成果を挙げたがっているとのことだ。

一部では、朝鮮総連本部の競売問題との関連で総連に約627億円の債権を持つ整理回収機構(RCC)が総連との「和解交渉」に応じたと伝えられている。噂では、40億ドル(20億一括払い、残り20億は5年分割)を納めれば、RCCは競売を取り下げ、朝鮮総連は本部を存続できることになる。

また、野田政権が朝鮮高校の無償化問題を承認する意向を表明したとの噂も流れている。田中真紀子文科相が「そろそろ政治的な判断を下す時期に来ている」と発言したこともその流れからも知れない。この他にも国交正常化に向けての前向きの提案がなされたものと推測される。

次の局長級協議が待たれるが、年内開催となるのか、それとも来年に持ちされるかで、政権が交代しても交渉は続けると言明した北朝鮮の本気度が試される。

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