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中国・尖閣上陸団の顧問に単独インタビュー(相馬 勝)

香港の尖閣問題など反日運動、北京の中央政府により厳しい管理

先日、香港に行った際、尖閣諸島は中国領であると主張する民間団体「香港保釣行動委員会」の顧問的存在である劉夢熊氏に単独インタビューした。劉氏は香港で尖閣問題に関する対日抗議行動や尖閣諸島への上陸計画などを実行する際、「協議すべき中国の政府機関として、外務省、公安省や香港マカオ弁公室など3省2弁公室、1委員会に及ぶ。また軍が絡むこともあり得る」と述べて、運動自体が中央政府により厳しく管理されていることを明らかにした。

[caption id="attachment_4885" align="alignnone" width="620"] 香港の反日運動の様子(撮影/筆者)[/caption]

劉夢熊氏は実業家で、現在は香港の石油会社副社長などを務め、220億香港ドル(2640億円)もの資産をもつ。ビジネスの傍ら、政治にも関心を持ち、中国の統一戦線機関である中国人民政治協商会議(政協)の委員も務めている。

1996年7月に日本の団体が尖閣諸島に灯台を建設し、日本領であると強く主張したことに反発し、尖閣問題に関心を持つようになり、劉氏は同年9月に貨物船「保釣号」に乗り込み尖閣上陸を目指した。ところが、そのリーダーが泳いで尖閣諸島の上陸しようとして、海に飛び込んだ際、腰に巻いていたロープを船内の柵に絡ませて、宙づりとなり溺死する事故が発生したことで、上陸は中止になったという。

 

[caption id="attachment_4886" align="alignnone" width="620"] 尖閣運動について話す劉夢熊氏(撮影/筆者)[/caption]

 

劉氏はその後も運動を続け、香港保釣行動委員会を財政的にバックアップし、これまで400万香港ドルを寄付するなど、運動を支援している。8月に同委員会の活動家が尖閣諸島に上陸した際は100万香港ドルを新たに寄付したという。

ただ、劉氏によると、このときの上陸は「中国政府が黙認した結果」であるとして、通常の運動自体は北京の中国共産党政権の厳しい監督・管理下にあることを明らかにした。

尖閣上陸計画や反日運動をしようとする場合、協議すべき政府機関の3省は外務省、公安省のほか、対外的スパイ活動を取り締まる諜報機関的存在の国家安全省である、と劉氏は述べる。中国側から見れば領土問題が絡むために、「軍事的な対応も必要で、ときには中国人民解放軍とも話し合うこともある」と劉氏は明かす。尖閣問題で、中国では諜報機関と軍の2部門が直接的に関わっていることが明らかになるのは初めてだ。

[caption id="attachment_4887" align="alignnone" width="620"] 香港の反日デモで中国人民解放軍の旗をかざす老人(撮影/筆者)[/caption]

 

このほか、2弁公室は中国政府の直轄組織である香港マカオ弁公室と、香港における中国政府機関である「中央人民政府駐香港特別行政府聯絡弁公室(以下、聯絡弁公室)」、さらに広東省党委員会が挙げられる。

このなかで、最も香港にとって最も強制力を持つのが聯絡弁公室で、香港問題の実質的な最高責任者で、次期最高指導者と目される習近平・国家副主席に直結している。香港の最高指導者である行政長官もオフィスに呼びつけて、中央政府の指示を伝えるというほどで、香港は中央政府によって実際的に統治されていることがうかがえる。劉氏は「そのなかでも、尖閣問題は極めて敏感な問題であり、北京五輪が開催された2008年には『運動は控えてくれ』と指示が出されたほどで、尖閣問題に関する運動は極度に管理されている」と明らかにしており、中国大陸における今回の一連の激しい反日デモや運動は、北京の党中央の指示によって展開された〝官製デモ〟だったことは間違いないといえよう。