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突然、姿を消した金正恩夫人と叔母の金慶喜、その理由は?(辺 真一)

気になる金正恩の夫人と叔母の「長期不在」

田中慶秋法相をめぐる「外国人献金問題」、67年ぶりの日本人北朝鮮墓参団の帰国、朝日新聞が一面で取り上げた松原仁前拉致担当大臣の「二元外交」、欧米メディアの「竹島訪問」、そして韓国が問題にした海上自衛隊ヘリの「竹島接近」など今朝は、話題が豊富だ。

どれもこれも今すぐにでも取り上げたいテーマだが、これらの問題は一過性で終わらず、今後も尾を引くことからいずれ取り上げることにして、ここではTVで話題となっている北朝鮮の二人の女性の動静について取り上げることにする。

一人は、7月25日に遊園地の竣工式で華々しくデビューして以来、内外の脚光を浴びている金正恩第一書記の李雪主(リ・ソルジュ)夫人の「消息」である。

李雪主夫人は、夫と共に9月7日に平壌市内のスポーツセンターと民俗公園を視察したのを最後に28日間(10月5日現在)姿を消したままだ。建国記念日(9月9日)の朝鮮人民軍合奏団による記念公演も、また9月16 日の今年最後となるマスゲーム「アリラン」の観覧も取り止めている。

こうしたことからどうやら妊娠したのではと囁かれているが、仮に妊娠が事実なら、李夫人は年内は二度と、夫に同伴し、表舞台に現れることはないだろう。

もう一人は、金第一書記の後見人である叔母の金慶喜(キム・ギョンヒ)書記の動向である。

今年66歳の金慶喜氏は9月1日に大同江タイル工場を視察し、午後には金正恩・李雪主夫妻とともに朝鮮人民内務軍の公演を鑑賞したのを最後にこれまた公式舞台からプッツリと姿を消したままだ。

建国記念日の錦繍山太陽宮殿への参拝も欠席し、また、代議員であるにもかかわらず、25日に開催された最高人民会議への出席も取り止めている。消息を絶って、今日で35日目となる。

金慶喜氏の今年の動静を調べてみると、35日以上消息を絶ったことは過去に2度ある。従って、「長期不在」は彼女にとって決して異例なことではない。

一度は、元旦の錦繍山太陽宮殿参拝から金正日総書記誕生日の2月16日の同じく錦繍山太陽宮殿参拝までの45日間。そして、二度目は、5月1日から7月25日までなんと、84日間も表に出てこなかった時期があった。

これ以外にも、2月から3月にかけて20日間、7月から8月にかけて25日間と、他の幹部らとは違い、長期にわたって休養を取るケースがある。こうしたことから金慶喜氏についてはその都度「重病説」が流されることになる。

最長の84日間消息を絶った時も日韓のメディアで「重病説」や「再起不能説」が流されたが、85日目に遊園地の竣工式に姿を現し、なんと金第1書記らと絶叫マシンに乗っていたことが確認された。

さらに7月30日から8月24日まで25日間、公式活動を絶った時も「産経新聞」(24日付)が「複数の臓器に疾患を持ち、今後の執務継続も危ぶまれる状態」と報じたところ、翌25日に出てきて、モランボン楽団の公演を鑑賞し、夜には軍服を着て宴席にも出席していた。さらに、27日の青年慶祝大会にも出席し、30日には大会出席者らと記念写真に納まっていた。

「重病説をカモフラージュするためではないか」と書かれたが、本当に深刻な健康不安を抱えているなら、外国のメディアを意識し、そこまで無理する必要があるだろうか。

今回も、1か月以上も「不在」であることから、夫の甥が大使を務めているシンガポールの病院に入院中との情報も流れているが、仮に彼女に万一のことがあれば、金正恩氏にとってそのダメージは計り知れないものがある。

まだ30歳に満たない金正恩氏の最大の後見人は他ならぬ金慶喜・張成沢夫妻である。中でも、金慶喜氏こそがキングメーカーである。

父・金正日総書記が実妹の金慶喜氏を2009年6月に15年ぶりに表舞台に復帰させたのも、自分が亡き後、母親代わりとして正恩氏の面倒を見させることにあった。金総書記はかつて部下らに「慶喜の言うことは私の言うことだと思って従いなさい」と言ったことがあるほど、妹への信頼は絶大である。

「金正日」から「金正恩」へ世襲が順調に移行したのも、金慶喜氏がその後ろ盾となり、絶大な影響力を行使したからである。軍の最高実力者の一人である李英鎬総参謀長の解任を含め党や軍の人事を混乱もなく断行できたのも、No.2の組織担当のポストである党書記に就任して、その手腕を発揮したから可能であったと言える。

換言すれば、政治局員ら党最高幹部や次帥や大将ら軍将軍らが「金正恩擁立」で結束したのも、金日成ー金正淑の「革命家系」の継承者である金慶喜氏の存在が大きかったからと言える。

その金慶喜氏が父に続いて、万が一のことがあれば、正恩氏にとって身内で頼りになるのは、血の繋がってない義叔父の張成沢氏一人ということになる。

来週の8日は金正日総書記就任15周年の日にあたる。そして二日後の10日は労働党創建日にあたる。一連の関連祝賀行事に李雪主夫人と金慶喜書記が現れるのか、注目したい。

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