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野田首相の狙いは憲法改正大連立だ(藤本 順一)

第3次野田改造内閣が1日、発足した。18人の閣僚のうち、10人を入れ替える大幅改造である。ただ、岡田克也副総理、藤村修官房長官、玄葉光一郎外相、枝野幸男経済産業相ら主流派主要閣僚が留任したため、目玉人事と呼べるのは田中真紀子元外相の文部科学相起用くらいか。マスコミ報道は田中文科相が独り占めである。

だが、サプライズ人事に目を奪われているようでは今回の改造人事に込められた野田佳彦首相の真の狙い、思惑を見誤ってしまう。

「山積する内外の諸課題に対処し、政府・与党の連携を深め、内閣機能を強化するためだ」野田佳彦首相は同日の記者会見でこう述べた。

その言葉どおり、外に向かっては領土問題でギクシャクする日中、日韓関係の修復や日米同盟の強化、再構築は野田首相が取り組むべき課題である。内政においても、やり残した社会保障制度改革に道筋を付けなければなるまい。震災復興、原発の事故処理、再稼働問題も重くのし掛かってくる。景気対策も急ぎ求められるところだ。

しかしながら、すでに国民の信を失っている民主党政権にいったい何が期待できよう。ましてや衆参ねじれ国会、参院で問責決議を受けた野田首相の下であればなおさらである。

まずは秋の臨時国会、野田首相は赤字国債の発行を可能にする公債特例法案を成立させなかればならない。3党合意に基づく「社会保障制度改革国民会議」の早期開催、衆院選挙制度改革もある。自民、公明両党の協力が不可欠なところだ。

にもかかわらず、野田首相は両党が国会審議への協力と引き換えに求めている「近いうち解散」に応じる気配はない。それでどうやって臨時国会を乗り切るつもりなのか。

一つのヒントは改造前日、民主党との対決姿勢を鮮明にする安倍総裁は講演で憲法改正を次期衆院選の争点にする考えを示し、「まずは96条から始めたい」と述べていることだ。

96条は憲法改正の発議に衆参両院議員の3分の2以上の賛成を定めおり、安倍発言はこの改憲のハードルを下げることを主張したものだ。

そうであれば今すぐにでも民主、自民両党合わせて96条改正に必要な3分2の頭数を揃えることは可能だろう。これを野田首相が国会審議への協力と引き換えに逆提案すれば安倍総裁に拒否する理由はない。

自民党の安倍総裁、石破茂幹事長の2人と同じタカ派改憲論者の前原前政調会長の入閣にそんな野田首相の下心が透けて見えるのだが。

【東京スポーツ「永田町ワイドショー」(10月1日入稿原稿)より】