自民議員票が「安倍」に流れた本当の理由(藤本 順一)
安倍晋三元首相が新総裁に選出された。各候補の獲得票数は一回目が石破茂前政調会長199(地方165、議員34)、安倍晋三元首相141(地方87、議員54)、石原伸晃幹事長96(地方38、議員58)、町村信孝元官房長官34(地方7、議員27)、林芳正政調会長代理27(地方3、27)。決選投票は安倍氏108、石破氏89の結果となった。
地方票で圧勝した石破氏だが、議員票は当初から懸念されていたとおり、脱派閥を訴え、長老支配を批判したことが裏目に出たようだ。逆に石原氏は、派閥長老の支持を得たことで地方票に逃げられてしまった。その間隙をついて反石破の議員票と反石原の地方票を取り込み、漁夫の利を得たのが安倍氏の勝因である。
とはいえ近い将来、政権復帰が確実視される中での総裁選であれば、党内基盤が脆弱な石破氏に党運営を委ねるのも冒険がすぎよう。その意味では安倍氏を選んだ議員のバランス感覚を否定するものではない。
いずれにせよ、本欄一押しの町村信孝元官房長官が早々姿を消してしまえば、誰が新総裁に選出されてもドングリの背比べのレベルである。
いやいや、自民党議員にとっては担ぐ神輿は軽い方が使い勝手がいいに決まっている。そうであれば、議員票が小煩い石破氏ではなく安倍氏に向かったのも頷けよう。
案の定、安倍氏を担いだ面々のさっそく始まったポスト争い。とりわけ、安倍氏擁立にいち早く動いた中川秀直元幹事長、甘利明元経済産業相、塩崎恭久元官房長官、菅義偉元総務相の四人による幹事長争奪戦が見物である。
勝ちが見えた次期衆院選を幹事長として取り仕切ればカネと人事は思いのまま。野党暮らしの3年間の苦労を知らずに、ラクして政権与党の幹事長である。これほど美味しい話はない。だが、安倍氏がこれを許して4人を重用すれば、党内の反発は必至だ。とりわけ、
安倍勝利の最大の功労者である麻生太郎元首相の怒りは火を見るより明らかだ。
この4人には雑巾がけがお似合いである。安倍新総裁には、野田政権を早期解散に追い込み、政権復帰をはたすための骨太の人事を期待したい。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」(9月26日入稿原稿)より】