タカ派右翼の街宣活動と化した自民党総裁選(藤本 順一)
自民党総裁選で本欄イチ押しの町村信孝元官房長官が体調不良で緊急入院してしまった。病状は不明だが、総裁選について町村氏本人はなおも意欲を見せているそうだ。
だが、健康不安を抱えていては、野党第一党を率いて次期衆院選は戦えまい。残念だが、ここはいったん兵を退き、病気療養に専念することをお勧めする。
さて、そうなると総裁選の構図はガラリと変わってくる。当初、町村派が分裂選挙に突入したことで額賀、古賀、山崎派の支援を受けた石原氏が議員票で有利との見方がされていた。
また、地方票300は直近の世論調査通りだと、石破茂前政調会長が120票、残り180票を石原伸晃幹事長と安倍晋三元首相がそれぞれ90票ずつ分け合い、両氏が決選投票進出をかけて2位を争う展開だが、町村支持の30票の行方次第では大波乱もありだ。
漏れ伝えられるところでは、町村派のオーナーである森喜朗元首相は派閥分裂を回避するため安倍氏を支持するそうだ。
安倍氏の議員票は麻生、高村派を加えて40票前後だが、これに町村支持の30票がそっくり上乗せされれば一回目の投票で安倍氏が本命石原、対抗石破を抑えてトップに立つことになる。さらに言えば2位、3位連合を模索していた安倍、石破両氏が決選投票で争うことにもなりかねないのだ。
それが党内民主主義の結果であれば致し方ないが、どちらが勝つにしても自民党のタカ派路線はより鮮明になることだけは確かである。「選挙の顔」としても悪くはない。
ただ時節柄、しょうがないにしても領土問題で勇ましい言葉を連呼するだけの総裁選にはどこか物足りなさを感じてしまうのである。
街頭に立つ総裁候補たちが馬鹿丸出しにタカ派右翼度を競い合っているようでは、国民もシラけよう。もとより、自民党の政権復帰は望むところである。それは自民党が持つ保守政党の懐の深さと手堅い政権運営を期待してのことだ。勘違いしないでほしい。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」(9月21日入稿原稿)より】