野田総理と李大統領が握手。だから日本はナメられる(辺 真一)
「泣いた烏がもう笑った」ではないが、「怒った野田総理が、もう笑った」というのが、昨日の野田総理と李明博大統領との握手シーンだ。
韓国側の説明では、ウラジオストクで開かれていたアジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議の直後、野田総理が突然、李大統領に近づいてきて話し掛けてきたそうだ。両首脳は4~5分立ち話したようだが、日本の猛反発に当惑していた李大統領は野田総理から歩み寄ってきたので内心ホットしているのかもしれない。
すでにその前兆はあった。野田総理が前日の首脳会議の冒頭、これまた突然隣の席の李大統領に笑顔で手を差し伸べ、握手を求めていたからだ。野田総理は「目があったので、自然に握手した」と説明しているが、李大統領から「悪かった。仲良くしよう」と言って手を差し出したらならば、いざ知らず、怒っている側の、抗議している側の野田総理から何も先に手を差し伸べることはないと思うのだが、おそらく「大人の外交」をしたつもりなのだろう。個人的には野田総理の「寛大な対応」を評価したい。
それにしても、日本政府は当初、李大統領の「竹島上陸」「天皇発言」そして「親書拒否」に抗議して、確か日韓首脳会談の拒否など「李大統領相手にせず」の方針を決めていたはずだ。
李大統領の竹島(独島)上陸の日に日本では「なめられている」との議論が高まっていたことから「ならば」とわざわざこのブログで「9月にウラジオストクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に韓国側から打診があっても日韓首脳会談には応じないことである。李大統領は日本の法律に基づけば、日本の領土に不法入国した言わば処罰対象の『不法入国者』である。相手が大統領であっても法治国家の日本の総理が、日本の法律を犯した『犯罪人』を相手に会談はできないだろう」と老婆心で「進言」したが、クリントン長官から説得されたのかどうかわからないが、何事もなかったかのように歩み寄るとは、これではなめられてもしょうがないのではと他人事ながら思ったりもする。
思えば、昨年も韓国の超党派の「独島を守る国会議員の会」のメンバーらが再三にわたる日本政府の抗議を無視し、マスコミ関係者らを引き連れ、竹島に上陸し、「美しい我らの領土独島音楽会」と題する音楽会を開いたことがあったが、この音楽会を主導した中心人物の自由先進党の朴宣映議員が年末に来日した際に何の事情聴取も、お咎めもなく、日本政府は入国を認めていた。数か月前に自民党の議員らが竹島の中継地である鬱陵島訪問を拒まれ、韓国政府に入国を拒否され、強制送還されていたにもかかわらずである。
理由は簡単だ。朴宣映議員が拉致問題で来日したからだ。同じように主権に関わる問題だが、韓国は日本が「竹島問題」よりも「拉致問題」を重視、優先していることをこの時、思い知ったようだ。
くどいようだが、李大統領は、日本が国会で李大統領の「天皇発言」について「決して容認できない」と謝罪と撤回を求めている相手だ。国会決議からまだ二週間そこそこしか経ってない。「大局的観点」や「未来志向的な観点」から歩み寄ったということならば、それはそれで良いことだが、「チキンレース」に例えれば、日本が先に下りたことになりやしないだろうか。
日本には「負けるが勝ち」という諺があるが、日本の「毅然たる外交」は所詮、こんなものと、韓国や中国に勘違いされなければ良いのだが。
先週、大阪に行って、前宮崎県知事の東国原秀夫さんや国際ジャーナリストの蟹瀬誠一さんらと関西テレビの番組で一緒になり、竹島問題などについて論じたが、今の日本の大勢は、どうやら国際司法裁判所(ICJ)に提訴すれば、「それで良し」という雰囲気のようだ。日本にとってICJはまるで「駆け込み寺」のようでもある。
【ブログ「ぴょんの秘話」より】