相変わらずの派閥談合で決まる自民党総裁選(藤本 順一)
自民党の谷垣禎一総裁は3日、出身派閥(古賀派)の古賀誠元幹事長との会談で「自民党をもう1回国民に信頼される党にしたい。最後の詰めは私自身の責任でやらなければならない。3党合意も軌道に乗せるところまでは責任をもってやりたい」と述べ、総裁再選への協力を要請した。
先に3党合意を否定する問責決議案に同調しておきながら、何を今さらの責任か。古賀氏はその場で「今回は思い切って若い人を支持したい」と断った。当然である。
前日のテレビ番組では、早くから谷垣氏の再選支持を表明していた町村派オーナーの森善朗元首相にも「谷垣氏にも限界があるのではないか。ガラッとボクの気持ちは変わった」と三行半を突きつけられている。党内最大派閥の町村派と第2派閥の古賀派に背中を向けられては、再選の可能性は限りなくゼロに近い。
首相のイスを目の前にして気の毒だがこの際、潔く身を退いてはどうか。世代交代を促すことが、唯一残された谷垣氏のとるべき責任である。
心配はいらない。民主党と違い、自民党のポスト谷垣世代は人材が豊富だ。3党合意の谷垣路線を引き継ぐのであれば、石原伸晃幹事長が適任だろう。小泉内閣の国交相として道路公団の分割民営化を成し遂げた実績もある。古賀元幹事長や森元首相ら党内実力者のウケもよく、安定した政権運営が期待できそうだ。
対抗馬は石破茂前政調会長辺りか。安保防衛の専門家で、小泉、福田両内閣で防衛大臣(長官)、麻生内閣では農林相を務めた。政治キャリアは申し分ないが、谷垣氏同様、党内基盤が脆弱だ。課題は基礎票の上積みである。
いずれにせよ、総裁選のカギを握るのは町村派の動向だ。同派からは会長の町村信孝元官房長官と安倍晋三元首相の2人が出馬の構え見せており、両者譲らない。安倍元首相は5日、派閥横断に60人を集め「新経済成長戦略勉強会」の初会合を開く予定だが、町村派内からの参加者は10数名に止まる見込みだ。これでは石破氏と同様、基礎票の劣勢は否めない。だからだろう、決戦投票になった場合に備え、政策、支持基盤が重なる石破氏との連携を模索する。しかし、そうなれば町村氏は逆張りで石原氏と手を結び対抗してくるはず。結論を言えば、決戦投票は衆参両院議員200票で決まるから安倍、石破両氏が連携してもまず勝ち目はない。相変わらずの派閥談合政治だが、これが今現在、自民党総裁選の客観情勢である。
【東京スポーツ「永田町ワイドショー」(9月3日入稿原稿)より】