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日朝か南北か? 野田と李明博の外交競争(辺 真一)

日本政府は、局長級の日朝政府間本協議を「小泉訪朝」10年目にあたる9月17日までにどうやら開きたい考えのようだ。課長級予備交渉では局長級会議の日を定めることを渋るなど日本をじらした北朝鮮に比べて明らかに野田政権は前のめりになっている。

思いもよらぬ日朝の急接近に神経を尖らせているのが韓国の李明博政権である。野田政権が李大統領の竹島上陸に反発して韓国の頭越しに北朝鮮との関係修復を図るのではと内心穏やかではない。

竹島で7日から予定している防衛訓練で海兵隊の上陸演習を取りやめたのは、日韓関係をこれ以上、こじらせたくないとの配慮もあるが、北朝鮮問題で日本との協調関係を維持したいとの韓国政府の思惑もあるようだ。その意味では、日本が切った「北朝鮮カード」が功を奏したとも言えなくもない。

韓国政府は北朝鮮が日本人戦没者の遺骨問題をカードに対日アプローチに乗り出した真意を測り知れないでいる。中でも、北朝鮮にとっては背信者であるはずの「金正日の料理人」の藤本健二氏を金正恩第一書記が招請し、VIP待遇をしたことに驚きを隠せないでいる。

昨日付の産経新聞は藤本健二氏について、「韓国メディアはおおむね関心が低く、批判的だ」と報じていた。韓国のメディアの関心が低いのは、藤本氏が韓国のメディアを一切相手にしなかったことが原因のようだ。

藤本氏によると、帰国時日本のメディアだけでなく、韓国メディアからも取材依頼が殺到していたそうだ。一例として、朝鮮日報系の「テレビ朝鮮」はファーストクラスと高額の謝礼を条件に日本のテレビで発言する前に訪韓し、テレビ出演するよう要請していたそうだ。

藤本訪朝に続く赤十字社協議に外務省課長級協議、そして局長級本協議という事態の急速な発展に焦りを感じ始めたのか、李明博政権は任期中に最悪の状態にある南北関係に風穴を明けたいと腐心している。

統一教会の文鮮明教主が死去したが、李政権は北朝鮮が弔問団を派遣してくることを密かに願っているようだ。金正恩第一書記は本日、哀悼の意を表す弔文を遺族に送ってきた。こうしたことから北朝鮮が弔問団を送れば、関係修復の好機に捉えたいようだ。

文鮮明氏は金日成主席が1994年7月に死去した際に、No.2の朴普煕氏らを弔問させ、また昨年12月金正日総書記が死去した際には次期後継者とされる7男の文亨進氏を派遣している。慣例に従えば、北朝鮮からの「返礼」も十分に考えられる。

北朝鮮と統一教会との蜜月関係は、1991年11月に教祖の文鮮明氏が平壌を電撃訪朝し、金主席と会談してから始まった。

北朝鮮当局が文鮮明氏にプレゼントした当時の1時間ものの訪朝記録映像「文鮮明先生故郷訪問記録 1991年11月30日―12月7日」を観ると、北朝鮮当局は直前まで「反共の頭目」と罵倒していた文鮮明氏のため出身地への移動にチャーター便を用意するなど、破格の待遇をしていた。

「殺されているか、迫害されていると思っていた」親族らとの再会を果たした文鮮明氏も上機嫌で、それまでの「打倒共産主義」の看板を下ろし、「共産主義の悪魔」と敵視していた金主席や北朝鮮を持ち上げる発言に終始していた。

北朝鮮への「答礼」として、統一教会系の企業が進出し、現在、平和自動車のほか、平和自動車部品会社、平和ガソリンスタンド、普通河ホテルなど7つの現地法人を有し、事業を展開している。

金日成-文鮮明の「義兄弟関係」は金正日体制にも引き継がれ、文鮮明氏の90歳の誕生日にバラとゆりをそれぞれ90本づつ束ねた花束を平壌駐在の朴相権平和自動車の社長を通じて送っている。金正日総書記は文鮮明氏の80歳の誕生日の際にも豪華な貴金属を送っており、それらは統一教会の天正宮に展示されている。

日朝の改善が先か、南北の修復が先か、「竹島」で対立する野田総理と李明博大統領の「競争」となった。二人とも任期が残り少ないだけに、ここはポイントを稼ぎたいところだろう。

【ブログ「ぴょんの秘話」より】