原発ゼロへの秘策! 農地に太陽光発電(高野 孟)
《新聞はベタ記事が面白い》No.009
日本農業新聞8月31日付の片隅に「農地に設置の太陽光発電」を武蔵野市農業委員会が視察したという記事がある。
「ソーラーシェアリング」という方式で、耕作中の農地の上に太陽光発電パネルを設置して、農作物と発電パネルで太陽の恵みを「シェア」するという、もしかしたら太陽光発電の拡大に転機をもたらすかもしれない画期的なアイディアで、私も前から注目していたし、ふと気が付くと菅直人元首相の公式サイトでも「自然エネルギー研究会と私の活動」の項に3月13日付で紹介されていた。
これは、千葉県市原市で「CHO技術研究所」を主宰する長島彬所長の発案によるもので、農作物の光合成にはそれほど大量の太陽光を必要とせず、それを超える日照はかえって植物にとってストレスになるという「光飽和点」の原理があることから、農地の上に単管パイプで棚のような構造物を組んで、その上に隙間を空けながら農地面積の3分の1から4分の1程度の面積になるように太陽光パネルを置いて、作物も十分育つしそこそこの電力も得られるようにした。
実証実験では、収穫に影響がないどころか、むしろ適切な日照で夏場の水遣りも少なくなり、収量が上がる場合さえあるという。
何より面白いのは、例えば3反歩の田んぼを持つ農家が稲作をやって反当り10俵の収穫があったとして、1俵の農協買い取り価格は1万5000円程度だから、45万円の収入にしかならない(こんなだから後継者がいなくなるわけだ)が、その田んぼにソーラーシェアリングをフルに導入してそれを売電すると300万円の収入となる。これを合わせれば十分に「食べていける農業」が実現可能になる。初期投資は反当り250万円ほどだという。
太陽光発電は、それを大規模にやろうとすると用地の確保が問題で、アフリカかアメリカ中西部の砂漠のようなところでやるなら別だが、日本のような狭い土地では、無理にやろうとするとかえって自然破壊になるという矛盾を抱えている。
一時、休耕田や遊休農地にパネルをという話も出回ったが、それでは農地に死刑判決を下すようなことになってしまい、農業の再生には繋がらない。田畑を活かしながら地域で電力の地産地消・自給自足ができるというところにその画期性がある。
長島所長の試算では、日本の電力需要をすべて太陽光発電に賄うには100万ヘクタールが必要。それを仮にすべてこのソーラーシェアリング方式でやろうとすると、農地面積の3分の1のパネル面積として、その3倍の300万ヘクタールの農地が要る。ところが、衰えたりとはいえ日本にはまだ460万ヘクタールの農地があるのである。
原発を30年にゼロにするか15%にするかなどといつまでもウジウジ議論していないで、「よーし、全部これ行こう!」という思い切りのいい政権は出て来ないのか。
【NLオリジナル】
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